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性ホルモン療法の利点、欠点

女性ホルモン療法はよく耳にする言葉ですが、男性ホルモン剤は男性の場合でもあまり使用されて
おりませんこれには、いくつかの理由があります。男性ホルモン剤を投与すると体重が増加しますが、
これは体の水分とともに筋肉が増大するためです。それだけならよいのですが、男性ホルモンは
しばしば肝臓機能を悪化させ、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を増加させたり、動脈硬化を
促進する作用もあるのです。かって男性ホルモン(テストステロン注射液)が更年期障害の治療に
利用されたこともありましたが、今では、ごく一部の病医院で使用さているのみです。一方、内服用の
テストステロンは、特別な適応以外は処方されていません。

男性ホルモンとは反対に、女性ホルモンは副作用の心配がほとんどなく、よい作用をたくさん持ち、
しかも長期間の使用が可能で, 「ホルモン補充療法を受けている人は長生きする」 といわれ、
その学術的根拠が次第に解明されてきております。女性は治療のみならず、よりよいシニア時代への
薬として女性ホルモン剤を利用出来るわけです。一方、男性は副作用の点で男性ホルモン補充療法を
受けることができないため、ホルモン以外の手段で若さを保持するしかありません。

卵胞ホルモン(エストロゲン)は乳腺の発達を促します。ただし、成人女性でエストロゲンの分泌量が
正常な人は、ホルモン療法をしても、お乳はそれ以上の大きさにはなりません。エストロゲンは皮膚を
きめ細かくし、髪の毛を細く、しなやかなものにします。血液中のコレステロール値を減少させる
作用もあり、加齢による動脈硬化を遅らせます。月経不順の方も、毎月繰り返される正常の月経周期変化を
コピーするように、性ホルモン剤を服用して行けば、リズムを欠いた性ホルモン分泌パターンも、次第に
よい方向に改善されていきます。

当院での患者さんは20代〜30代前半の方がほとんどですが、10代後半から60代前半までの女性に、
結合型エストロゲン剤を多用しています。この薬剤は1960年に、当院院長が米国の病院に初めて勤務した
時に米国などで発売されたので、欧米ではこの時に、本格的に女性ホルモン療法がスタートしました。
日本はその潮流に取り残されたとも言えますが、それから40年もの間、この薬剤が世界規模で膨大な
数の女性に使用されて来ました。それは副作用がほとんどない、極めてすぐれた薬剤だったからです。
日本で使用し始めましたのは1970年代からですがが、広く認知されたのは1990年代からです。
エストロゲン剤には、この他数種類の製剤があり、当院ではその方にあったものを使い分け処方して
おります。

40歳をすぎ、エストロゲンの値が減少してくると、のぼせ、発汗、いらいら、肩こりなどの更年期障害が
出やすくなります。エストロゲンの低下は骨折を起こしやすい骨粗そう症を起こし、血液中のコレステロール
(殊に悪玉コレステロール)や中性脂肪を増加させ、二次的に、動脈硬化、脳梗塞、ぼけなどの症状を
誘発する素地をつくります。


引用:2016年2月、橋本和法教授講演スライド


更年期障害の症状が出てから初めてホルモン治療を考える先生や患者さんが多いと思いますが、当院では、
月経が不順になった段階で、症状が全く認められなくとも、血液中のエストロゲン量を測定し、その値が
低下していれば、性ホルモン療法を開始するようにお話しています。そうすることによって、治療の遅れに
よって引き起こされる重症の更年期障害を未然に防止し、より健康な生活を送るようにすることができる
からです。治療期間は、エストロゲンの値の低下が判明した時点から、65歳までの15年間から20年間、
継続的に性ホルモン補充療法を行います。

女性ホルモンのうち、エストロゲン剤のみを連用していると、年齢の高い女性では子宮体がんの発生率を
増加させます。しかし、ここで黄体ホルモン(プロゲステロン)を添加し、月経を起こさせれば、逆に、
体がん発生を減少させることができます。プロゲステロンを併用することにより、こうした治療を受けて
いた女性の方が、女性ホルモン療法を受けていない人よりも、子宮体がんになりにくいとも言えます。
高齢者では月経は必ずしも毎月起こさせる必要はなく、エストロゲン剤を3週間服用したら、1週間休薬する
方法をとり、月経は年に数回起こさせるだけでもよいでしょう。この他に、エストロゲン剤とプロゲステロン
剤とを同時に服用して行く方法もあります。


乳がんとの因果関係ははっきりしませんが、脂肪摂取量の多い米国等の国では、エストロゲンを5年間以上の
長期にわたり服用すると、乳ガン発生率が増加するとの報告もあり、定期的な乳ガン検診は必要です。乳ガン
は自己検診にて発見されることも多く、月経終了後に入浴されたときに、自分で触診されることをお勧めします。
エストロゲンは血液凝固機能に関与すると言われていますので、喫煙者や血栓症を起こし易い人、心臓疾患を
患っている方、脳血管障害のある人は服用を避けるべきです。

最近は、性ホルモン剤の高い治療効果が認識されて来ておりますが、その一方で治療を受ける側の女性の
ホルモン剤に対する不安感は、やはり根強く残っていて、若い方でも長期的なホルモン療法に抵抗感を示す
人がおります。喫煙者の中にはタバコの有害性については全く無関心ですが、ホルモン療法の副作用に
関しては強い警戒心を持つている方がおられます。消極的な人のなかには、月経不順をそのまま放置しても、
血液中のホルモン値に大きな異常がない限り、短期的には身体に大きな悪影響を及ぼさないという考えも
あるのは事実です。薬を服用しないで、あるがままに過ごせば、薬剤の負の効果を受けることもありません。
当院では薬の副作用について非常に心配されている方にはホルモン製剤を処方しておりません。医療の
最前線の成果を享受することなく「自然のままに生きる人生」もあることも理解できます。

専門の臨床家の立場から言えることは、女性ホルモン療法はホルモン分泌不全の方にとって、大きなメリットを
もたらす手段ですので、推奨できる治療法です。

無断転載不可


注意上記診療情報記録は2018年1月現在のものです
日本産科婦人科学会認定専門医 医学博士 宮本順伯



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