論説
 「公共的施設内全面禁煙規制」導入への道筋





Dr. Junhaku Miyamoto talked at the Fifth Annual Meeting of Japan Society for Tobacco Control, held in Matsuyama.

2010年日本禁煙学会総会が9月に松山にて開催された。

「禁煙席ネット」の宮本主宰は、世界が全面禁煙を主軸とした受動喫煙防止法を制定し、完全に運用している中、
日本では低レベルでの議論に終始し、法令を審議し立案する当事者に国民を受動喫煙被害から守るにはどの
ような法的規制を行って行くべきか、そこに貫く信念がないと述べた。画期的だと誤認されている神奈川県条例
の審議過程を今回改めて公開したが、分煙を法的に認め制定したことによる弊害が、日本全土に広がる憂いが
出てきている。もし、多くの地方自治体が先行した神奈川県条例と同様の受動喫煙防止条例を制定すれば、
日本は世界先進国の中で唯一、「分煙体制」を採用した、「最も好ましくない喫煙規制国」となる恐れがあると
強く警告した。


論説 「公共的施設内全面禁煙規制」導入への道筋
The way to cope with the resistance to a total smoking ban in public places in Japan

Governors! Are you sure that you are qualified to set up a smoke-free ordinance?

屋内での喫煙行為を全面的に禁止することが、タバコから放散される 発癌物質を含む有害煙の脅威から
人々を守る唯一の手段であり、今 世界各国は、こぞって喫煙規制の法制化を加速させている。2003年、
WHO加盟国はタバコ枠組み条約(WHO FCTC)を採択、2005年に 発効したが、そこでは屋内の職場、
公共交通機関、屋内の公共の場所 において国民がタバコの煙にさらされることからの保護を定める
国内法 を制定し実施することが謳われた。日本もこの条約に署名し屋内公共 的施設に於ける全面
禁煙は国際的な約束事となっている。

タバコ規制に無力,、無気力な厚生労働省

しかし、欧米、アジア・オセアニア先進国では、すでに公共的閉鎖空間の 全面禁煙を規定する法令が
施行、運用されているなか、日本では未だに 低レベルでの議論に終始し、法令を審議し立案する当事者
に、国民を 受動喫煙の害から守るためには、どのような法的規制を行って行くべきか、そこに貫く理念が
全くない。業界からの圧力に右往左往し、どのように して公共的閉鎖空間での全面禁煙規制を公布、
実施して行くのか、戦略 のない実体が明るみに出ている。その根底には、厚生労働省の先見性、
一貫性の欠落があげられるが、国民全体のタバコの有害性に関する 知識、認識の低さも否定できない。

日本独自の政治的背景もある。1955年に結党し、2009年に政権から離脱 した自民党が長く政界に
君臨していたことだ。自民党は公共的空間での 喫煙禁止という世界の潮流を全く無視し、建物内での
喫煙行為を野放しに してきた。2003年に健康増進法が制定されたものの、業界に単なる努力 義務を
求めたのみで実効性に乏しく、労働者の健康保護を無視した分煙 体制を認めてきた。

2008年11月、厚生労働省タバコ対策専門官は、神奈川県の分煙条例 に関する読売新聞記者の質問に
対し、「WHO勧告に実施義務はない」と 返答、公的立場にありながら、タバコ枠組み規制条約を平然と
無視した発言を行っている。2010年2月に始めて厚生労働省は公共空間では 全面禁煙が望ましいとの
通達を出したが、その後の具体的な動きはない。 国民の期待を背景に誕生した民主党政権での動きは
緩慢で、政府 税制調査会でタバコ税の課税強化を示唆、1箱100円余の税価格上げを実現させたものの、
急がれる 公共的施設内での喫煙を規制する国法制定に関する発言はない。

タバコ会社の広報活動


The TV commercial to campaigning for a separate smoking space in restaurants,
sponsored by the Japan Tobacco Inc.


こうした中、タバコ会社は着々とその影響力を浸透させて来ている。タバコ広告の規制をかいくぐって
テレビでの「分煙」広報活動、雑誌に 新製品の広告掲載、未成年者へのタバコ販売禁止を強調すること
による反動、つまり20歳になって吸い始めることへの期待、路上禁煙、 海水浴場禁煙をサポートして
これを支援し、きれいな街作りに貢献して いるように見せている。その狙いは喫煙率低下に直結する
屋内空間 における喫煙禁止から禁煙活動家の注意をそらし、その関心を屋外に 向かわせようとしている
ことだ。 さらに屋内で喫煙出来る空間を確保するために「分煙ニュース」なる コマーシャルを頻繁に
放映し、あたかも分煙が社会の基本である、飲食 店などでタバコを吸うことは当然のことであるとの
意識を国民に植え 付けようとしている。最近では法令がタバコの煙をその対象としている 盲点を
かいくぐり、無煙タバコを発売し、日本航空、鉄道会社などに その使用を広めようとしている。その目的
は全面禁煙体制を打ち 破るための風穴を設け、屋内での喫煙行為を正当化しようとすること にある。

地方自治体による受動喫煙防止

条例 受動喫煙防止法は国が制定すべきものか、地方分権の考えに沿って 地方自治体が立ち上げる
べきかの問題がある。2009年4月、国レベル における喫煙規制は期待できないとして、神奈川県は
独自に「受動喫煙 防止条例」を制定した。松沢知事の情熱ある説得力に賛同し、その 取り組みを
評価する声は大きい。しかし、内容よりも「日本初」の条例 成立にすべてを優先させた。取り返すことの
出来ない事項は、先進国 が2003年に放棄した制度、「完全分煙」を県の条例に取り入れたことにある。

分煙方式には喫煙スペースの中での従業員の労働を認めたものと、それを認めず、喫煙者が単に
タバコを吸うときに入る喫煙ブースが ある。飲食店規制の初期段階では、終了期間を限定して後者の
方式を 認めた国や州は少なくない。しかし、神奈川県条例のもとでは従業員 は、発癌物質を含む
有害なタバコの煙を吸い込みながら長時間そこで 働かねばならない。労働者の健康と人権とを完全
に無視した法制度 である。さらに県は税金を使用して喫煙スペースの設置を促進する ことを広報して
いる。 そこには施設を使用する利用者のみの安全を念頭に置き、施設で働くものの健康に対する
配慮は全くない。利用する自分たちさえ良ければ、 働く人々はどうでもよいとの考えがその根底に
ある。国や都道府県 の法令で決して定めてはならない事柄である。しかし、飲食店業界 は神奈川県
方式を先読みして分煙設備の整備に乗り出している。 由々しき問題だ。

全面禁煙規制には業界などの反対が多いので、とりあえず分煙と するとの考えだが、その根本的な
誤りに気付いていない。一旦条例 で飲食店などに喫煙空間の設置を認めると、そこには分煙に必要な
システムを構築する義務が発生する。しかし同時に、その喫煙空間 を保持して行く権限も確保される。
企業はこれを盾にさらなる規制 には反対するであろう。分煙のために投じた資金をわずか数年間 で
回収出来ないのも明らかだ。

最近では職場での禁煙が進行しているが、日本では男性の30%,女性の20%の労働者が、今なお
受動喫煙被害を被っているという。施設 空間を分断する分煙制度は何も解決しない。それを世界
保健機関 (WHO)は何回も警告している。閉鎖空間内に喫煙スペースを 新たに設けるような政策は
時代錯誤も甚だしく、明らかな間違いである。神奈川県条例はスタートする時点からそうした認識の
欠如が見られた。

受動喫煙防止法の目的は第一に施設利用者をタバコ有害煙から守ることである。そして大きな副次的
な効用として喫煙者の禁煙を促すことがある。アイスランドを始め、先進諸外国の法制度を検証すると、
法規制の重要な二次的目的として、そこで働く人々の健康を守る ことを掲げている。どのような環境
でも施設利用者の安全のみを確保した条例は制定すべき ではない。松沢知事は職場での喫煙
規制を最初から審議の 対象から外している。職場での安全性を確保していたら、人が そこで働く
分煙制度など、とても考えられない法制度である。

神奈川県条例の審議を始めた2007年には、日本に存在した唯一 の法的喫煙規制は健康増進
法であった。2003年に施行されたが、 そのなかで公共的施設を管理する者は「利用する者に
ついて受動 喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めねばならない」 との努力義務を
課している。ここに重大なミスがあった。分煙体制の下で設けられた喫煙空間での労働を禁止しな
かったことだ。厚生労働省健康局からは、分煙に関する具体的な通達が 空港などの公共施設
管理者に送られ、国としても、法律上、分煙を 推進する立場を表明した。

神奈川県受動喫煙防止条例の審議委員11名のうち、地元の保健 所長などを含む9名が分煙容認の
立場をとり、全面禁煙を主張した ものは、2名に留まった。県知事は県民の考えをアンケートの形で
募ったが、そこに反映された多くの意見は現状の改善のみを考え、 すでに世界に広がりつつあった
公共的施設の全面禁煙制度は全く 無視されていた。支援団体の神奈川県会議も「分煙は全面禁煙
への出発点」「先ずは条例制定を」と、 分煙制度をからスタートさせることを申し入れた。公共放送で
あるNHK 神奈川放送局は「分煙は世界の流れ」とした誤った情報を関東地方 全域に放送した。

松沢知事側の戦略にも甘さが見られた。喫煙規制の初期段階では 回避すべき娯楽産業、居酒屋
業界を先ず視察、テレビを通じて 喫煙規制を広報し、最初から反対の大合唱を呼び起こしてしまった。
ここで賛成意見は力を失い、当初提言されていた全面禁煙案を取り 下げるという事態を招いた。
知事は、2008年12月、すでに禁煙と なっていた学校、病院、劇場、官公庁施設を除く全施設を
完全分煙とし、100u以下の施設を条例の適用除外とした改訂案を議会に 提出した。この時点に
よって受動喫煙防止の理念は完全に失われ、 神奈川県条例は形骸化してしまうことになる。

フィリップ・モーリス・ジャパンは「全面禁煙をやめ、分煙制度を取り 入れたこと」「小規模施設を
規制から除外したこと」を支持し、タバコ 会社として神奈川県条例に賛同すると表明した。世界
先進国が タバコ業界と対決して全面禁煙を設定するなか、タバコ会社にとって は極めて好都合の
条例が出来上がった。背景には国民の内向きの、 極めて低い有害意識と、働く人々の健康保全を
忘れた神奈川県 議会議員たちの存在があった。

全面禁煙への道筋を逆走した神奈川県受動喫煙防止条例は、「喫煙空間」の整備を呼びかけ、
「喫煙空間」での労働の法的承認と 経済的支援を表明、飲食店での分煙形態を法律で認め、これを
恒久化した。飲食店業界では、タバコ会社の「分煙ニュース」広報 活動と呼応して、その規制内容が
今や飲食店業界のバイブルとなり、 多くの人々は「分煙」形態を当然と受け入れている。


Dr. J Miyamoto presented a process of the Kanagawa Prefectual Anti-smoking Act and the adverse outcome of the local ordinance.


地方での迷走が始まっている。先進国ではとても考えられない行政による受動喫煙対策が進行している。
滋賀県では「受動喫煙ゼロを 目指す県民運動」の一環として、「完全分煙」の店を広報し推奨、 茨城県
牛久市では「時間帯分煙」、「完全分煙」を「空気のきれいな 店」として広報、神奈川県条例施行後の
横浜市内飲食店では、「タバコ を吸わない方は外のテラス席に」と誘導するなど、本末転倒の逆転 現象
が発生している。 神奈川県の前例が示すように、地方自治体は現状の改善のみを考え、安易に
「完全分煙」規制を採用することが多い。私は「全面禁煙を 採用しない限り、都道府県では受動喫煙防止
法を制定すべきでは ない」と考える。広域的な屋内空間での「全面喫煙規制」は国が 行わない限り非常に
難しい。仮に、分煙体制を容認した都道府県の 条例が次々に生まれ、飲食店などのリフォームが進行すると、
たとえ 国が全面禁煙規制法を公布しても、法令と条例のダブルスタンダード となり、その混乱は全国に
拡大する。そして日本は将来にわたって、 分煙体制が主流の「最も好ましくない喫煙規制国」になる恐れ
がある。


Dr. Junhaku Miyamoto warned the danger of that Japan becomes 'an unwanted smoking-restricted country', among the world,
if other local anti-smoking ordinances allow to set up a separate smoking space and further admit to working
in that section at food industries.



喫煙スペースの廃止

分煙は決して望ましいことではなく、国や都道府県が喫煙室設置の ための支援を行わないことが
重要である。喫煙室の設置はあくまでも 企業の経済原則で判断すべきことである。その理由として、
健康的 でない施設への税金投入、不採算施設への資金投入の回避、助成 することにより建物内
喫煙空間が半恒久化することが挙げられる。 フランスやフィンランドでは財政援助を行わなかった
ために、分煙から スムースに全面禁煙に移行することが出来た。 飲食店内の喫煙ブースは、
台湾、タイ王国、オ―ストラリア、ニュージランド、 フランス、イタリア、アイスランド、デンマーク、
ノルウェ−、スェーデン、 英国、カナダなどの国で廃止され、空港建物内は全面禁煙となっている。
台湾、英国、フランスの国では空港内喫煙ブースを全廃し、屋外に出て 喫煙せねばならない。

2010年2月、「厚生労働省が全面禁煙を通達」との報道があり、2003年 5月の公共的空間に於ける
分煙推進からの転換を図った。しかし、その 後の検討会で「飲食店など禁煙として経営に影響する
恐れがある場合 は分煙を認める」「喫煙空間整備のための資金援助を考慮する」と伝え られた。
通達の趣旨と現場での考え方に大きなギャップがあることが 露呈した。2010年8月、厚生労働省は
労働者保護のため職場環境 に於けるタバコの煙の許容最高濃度を定め、事業者に基準値以下に
するように義務づけるとの方針を発表した。全面禁煙制度の否定である。 こうした考えがまかり
通ること自体、世界の動向に全く無関心な、国と しての後ろ向きの姿勢が問われる。

世界は全面禁煙規制へ


This panel shows the main countries in the world which provide a total smoking ban in a public space.


喫煙規制の歴史は長い。レストラン、バーなど公共的空間での全面 禁煙制度は、1990年にカリフォルニア
州の小都市に始まった。 カリフォルニア全州に広がったのは1994年のことである。全面禁煙 規制は
次第に米国各州に広がる。2006年には日本人観光客依存度 の高いハワイ州でも公共的空間での全面
喫煙規制が施行された。 南米では2006年にウルグァイ、2009年にブラジルが全面禁煙設定を行っている。
欧州では2004年にアイルランド共和国とノルウェイが 全面禁煙に踏み切り、2005年にイタリア、マルタ島、
スウェーデン、 2007年に英国とフィンランド、デンマーク、フランス、アイスランド、 2009年にギリシャが
全面禁煙規制を実行している。オセアニアでは 2004年にニュージランドが、2006年にオーストラリアが
全面禁煙に 移行している。アジアではシンガポールが2006年に、香港は2007年 にレストランなどを全面
禁煙としたが、2009年にその範囲をバー、 酒場、ナイトクラブに拡大した。2008年にはタイ王国、インド、
トルコ、 2009年にはシリアで全面禁煙規制を実施している。

受動喫煙防止法で認めてはならないもの

.
This panel shows the reason why we should establish the smoke-free space inside.


公共的施設での全面喫煙禁止を法令として公布、実施して 行くにはどのようなステップを踏んで進めて
行くか、そのエッセンス を示唆、提言して行きたい。 最初に何故に受動喫煙防止法が求められている
のか。その理由を 十分過ぎるほど、脳裏にインプットしておく必要がある。すでに述べられているように、
主要な目的はタバコを吸わない人の健康を守ることであるが、閉鎖空間内での喫煙 行為を禁止すること
により喫煙者の健康障害を未然に防止し、禁煙 へのきっかけを促す副効用は大きい。法律の趣旨は、
その施設利用者のみ を対象とすることなく、働く人をタバコの有害煙から守り、クリーンな 労働環境を
整備し、提供することにある。そのどちらかが欠けても、 それは認められるべきものではない。

法令設定の際に設備規模により規制内容を区別してはならない。 100u規制、200u規制、全く意味の
ない規制ラインであり、その 数値の根拠をだれも説明することは出来ない。受動喫煙被害の多い
小規模施設を除外することは誠意あるものの行う政策ではない。 ドイツ連邦憲法裁判所の下した規模
による規制措置の違法判決は スペイン、ポルトガルなどの国にも飛び火し、ドイツを含め、100u ルール
は崩壊し、飲食店などの混乱状態を垣間見ることが出来る。

神奈川県条例での大きな過ちは飲食店業界を単一のルールで 規制しようとしたことである。海外での
喫煙規制の歴史から学ぶこと も無く、利用者の喫煙率や年齢層など一切考慮に入れていない ことが
間違いを引き起こした。そこには未成年者の利用、パート労働の比較的多いファーストフード店と、
喫煙者の多い、「タバコと 酒は付きもの」とする誤った思想が支配的な居酒屋、バーとでは タバコ規制の
面では違うとの意識が存在していない。欧米先進国 では、少なくとも前期と後期に分けて規制時期を
ずらしている。 実際にレストラン、カフェで喫煙している客は少なく、多くの家族連れ が利用している。
ファーストフード店を先行して全面禁煙とした国も あり、レストランと居酒屋の規制時期を1年から10年の
タイムラグ で全面禁煙規制した州や国の歴史を学ぶべきである。


Dr. Junhaku Miyamoto talked about a restriction for smoking in hotels. He said the total ban,
which exclude the space for smoking, is the current trend in Northern Europa and North America.
However, in Japan, many hotels allow smoking inside of the buildings.


喫煙規制先進国に於いてもホテル内の喫煙客室を法令で認めて いるところは少なくない。しかし、喫煙
客室に比率制限を課し、全 客室に対して20%から25%程度に抑えている。私が海外のホテル で調査した
範囲では、自主的に5%から15%の比率で設定しているところが多い。ホテルのロビー、通路などは全面
禁煙規制する のが世界共通の大原則である。この部分を禁煙としてもホテル の収益に影響はない。
自主的にホテル内の喫煙スペースを全廃 しているのは、米国、カナダのシェラトン、ウエスティン、
マリオット、 北欧のチョイスホテルグループなどである。こうした世界の潮流に 取り残され、日本は一流
ホテルでも喫煙客室は60%以上、多くは 禁煙ルーム自体の設定がない。その背景には喫煙行為にあまり
にも 寛容な、むしろ無知な、日本人経営者および旅行者の存在がある。


It is a common sense in the world to prohibit smoking in all railway trains. However, a long-distance train of
the western part of Japan still provides a smoking vehicle or booth.


鉄道の例外なき全面禁煙化は世界の流れであり、国や州法で鉄道 車内の全面禁煙を制定している。
現在走行している喫煙車両は 今やまれな存在となっており、車内の喫煙ブースを許可している国 は
西欧、北欧では、ロシア以外の国との相互乗り入れのないフィンランド 一国である。一方、日本では、
喫煙車両がJR各社の夜行寝台に、 昼間の時間帯でも、JR東海と近鉄特急に喫煙車両が走行している。
喫煙車両は喫煙者を含め、鉄道乗務員の健康を脅かす存在であり、 早急に廃止すべきである。

受動喫煙防止法の戦略的立ち上げ方


Dr. Junhaku Miyamoto suggested to adopt the three-step restriction for smoking in a public space.


1) 初期規制:全面禁煙規制の可能な範囲をリサーチし、その範囲 に限定した法令を定める。
医療機関、教育機関、官公庁、美容室、理容室、銭湯、ホテルおよび旅館のロビーと通路、神社仏閣、
鉄道、 タクシー、航空機、ファーストフード店などの領域で先行規制を行う。

2) 第2次規制:レストラン、カフェなど利用者の喫煙率の比較的低い 業種に全面禁煙規制を導入する。
店舗屋外も出入口から6m以内 では喫煙を禁止する。

3) 第3次規制:喫煙規制に反対の多い居酒屋、バー、クラブ、 カラオケ、パチンコ、風俗営業店の
領域などでは遅行規制を行う。

オフィス、工場、パチンコでの閉鎖型喫煙所は3年間程度の時限 立法で容認することは、ことを円滑に
進める上で必要と考えられる。 必ず閉鎖するべき期限を明記すること。居酒屋、バー、パチンコ店、
風俗営業店などの規制を急いではいけない。多くの先進国が採用 した2段階以上の規制方法を
取り入れ、遅くれた全面喫煙規制を 考える。注意せねばならないことは、一旦、施設内を2分し、
閉鎖 期限を定めていない分煙体制を法律で認めてしまうと、その解決 は非常に困難となる。

英国では喫煙率の低下、経済の低迷、アルコール消費量の減少、 喫煙規制の強化によって毎年、
パブの減少が続いている。100u ルールの崩壊に伴ってスペイン、ポルトガルのバーで喫煙規制が
あいまいとなっている。全面禁煙を決めた筈のオランダでは41%の バーでこれを無視、タバコが吸える。
しかし、レストラン、ファーストフード 店ではすべての店で全面禁煙が守られている。こうした一時的な
混乱は喫煙規制法の強化によって解決する見込みだが、世界の現況 を他山の石として日本の喫煙
規制に関する法令の整備が必要である。 また、法律の隙間をかいくぐって使用されている無煙タバコ
に関して、 微量なりともタバコの成分が検出されたときは、受動喫煙防止法の 規制対象と明記する。

全面禁煙体制は遠い将来の目標ではない。日本は今すぐにでも 法的規制を実行せねばならない。
先ず、小さな領域から全面禁煙 規制をスタートさせれば良い。規制領域すべてを包括するために
分煙体制を許容、導入してはならない。完全分煙、規模による 差別化、恒久的喫煙室、濃度規制
導入、いずれも問題の解決に はならない。事態を混乱、悪化させるだけである。すべてにNOを
突きつける確固たる気構えが行政関係者に強く求められている。

私の過去10年の間、先進国の受動喫煙防止法研究の、最後に 行き着いたキーワード・・・それは,
simple and clear, total smoking ban である。ごまごまとした例外規定を設けてはならない。
単純明快、 屋内全面禁煙のみである。


Dr. Junhaku Miyamoto stressed that smoking ban should be applied to a restaurant, bar and pub at the different stages.
He advised the content of a total smoking ban should be simple and clear, excluding numerous exceptions.


本論文は2009年9月に札幌、および、2010年9月に松山で 開催された日本禁煙学会総会シンポジゥムに
於いて講演したもの を加筆編集したものである。
The article was written in November 2010, summarizing the talks at the fourth and fifth annual meeting
of Japan Society for Tobacco Contol, held at Sapporo and Matsuyama, Japan, respectively,
by Junhaku Miyamoto, M.D., PhD.

「一匹狼の国」世界の喫煙規制検証最新版 完売

公共的施設内全面禁煙規制」導入への道筋
2010年11月執筆 2016年7月加筆 
執筆 医学博士 宮本順伯
本文および写真の著作権は宮本順伯に帰属
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The way to cope with the resistance to a total smoking ban in public places in Japan
Information was added in July 2016.
Copyright(C) 2010 Junhaku Miyamoto, All rights reserved.


 
新聞
Herald Tribune International (ヘラルドトリビューン紙掲載
Japan must move faster on anti-smoking laws 
受動喫煙防止法の制定を急げ


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