「闘論」サマータイム
2007年8月27日付毎日新聞掲載 制度導入根拠に反論


 
 日本経団連のサマータイム導入根拠に反論 

夏時間(なつじかん)、サマータイムとは夏の間、時計の針を早め、早起きして、
屋内の照明の使用を控え、仕事のあとは野外で楽しもうと企画された制度です。





毎日新聞、朝刊に「闘論」なるコラムがある。経団連会長御手洗氏と私、宮本
順伯とが理論対決するように企画されたが、多忙のためか、それともネット上
での批判を受けることを避けたのか、経団連産業第3本部長、岩間芳仁氏が
その代役を務めた。

2007年8月27日付のコラム記事を一読して先ず気付くことはサマータイム
導入理由が果たして何なのかのか判然としないことだ。「もったいない」意識を
呼び起こして仕事と家庭との両立を図ると言うが、それがなぜサマータイムと
結びつくのか全く分からない。就業時間を1時間早めたからと言ってそれは
全国の時計を1時間早めたのではない。そこで昼休みにパソコンや部屋の
照明を消したとあるが、それはエネルギーを少しでも節約せよとの上部から
の通達を実行したまでで、サマータイム制度とは全く関係ないことだ。

「最近のデータを見ると、家庭生活でのエネルギー消費が増えているので、
原点に立ち返って、生活スタイルそのものを見直していく必要がある」と述べて
いる。しかし、暑い夏の日に、今までより早い時間に家にたどり着けは先ず
エアコンをつけ涼をとるのが普通であろう。それではかえってエネルギーの
削減どころか消費を増やしてしまうのは明らかなことである。生活スタイルの
変化を求めるなら、自家用車の使用を出来るだけ控え、電車やバスなどの
公共交通機関を利用するようにしたらよい。環境税の導入はそうした人々
のエネルギー節約への考えを加速させる役割を担う。

「世界では多くの国がサマータイムを導入しているので日本も導入すべきだ」と
言うが、そこには国土の気候条件、文化などへの配慮が全くない。日本の
夏は高温多湿で仕事の後に屋外でスポーツを楽しんだり家族で団らんする
ような環境ではない。紫外線の強い炎天下での運動は、健康上悪いだけでは
なく、熱中症を引き起こし人体にとってむしろ危険である。暑い夏の日差しが
おさまる夕方から初めてレジャーを楽しめるようになる。花火、灯籠流し、
大文字焼など日本には独自の「カルチャー・アフター・ダーク」が息づいている。
涼しい夕暮れ時にこそ人々は明日への糧を蓄えることが出来るのである。

「戦後サーマータイムが導入され後、4年間で廃止されたのは事前説明が
なかった」と推論しているが、反対意見が多かったのは導入のいきさつでは
なく、睡眠不足に伴う体調不全にあった。当時中学生であった私自身がその
被害者でもある。残業が増えた理由に朝鮮戦争特需を挙げているが、そう
した一時的な理由ではない。もし今サマータイムが導入されれば建設業、
サービス業などの業種では労働時間の延長は避けて通れない。

サマータイム賛成者は先ず結論ありき、それからその理由付けを無い知恵を
絞って行っている。経団連では「大事なことは省エネを推進する思考でサマー
タイムはその手段だ」と主張するが、ここには何ら関係のない二つの事柄を
無理やり結びつけようとする論理の飛躍がある。すでに多くの調査機関から
サマータイムを実行しても二酸化炭素の削減効果はほとんど認められない
との結果が公表されている。地球温暖化対策には、省エネ技術開発に対する
税制上の優遇処置、風力発電、ソーラー発電、安全性を確保した原子力発電
などを推進して行くことが必要となる。

サマータイム切り替えには煩雑さを伴った膨大な労力とコストがかかる。日本
経団連はそうした国民全員に苦痛もたらす負の効果について全くふれていない。
時刻を年2回強制的に変更すると国民の省エネ意識が高まり、その結果、
地球温暖化を阻止できるとの考えはあまりにもお粗末である。

 朝日新聞論壇 「サマータイムは迷惑千万」(1999年執筆)
 時計の針を動かすな・北海道サマータイム(2004年執筆、2006年加筆)
 猫でも分かる「騙し」のサマータイム(2005年執筆、2007年加筆、2008年加筆)
 ・・サマータイムを廃止した、そのときに味わった喜びと安堵感を、65年以上経過した今でもはっきりと記憶
 日本睡眠学会の声明文(2012年3月改定公開)
 猿知恵としか言いようがない「暑さ対策の」サマータイム(2018年執筆)
 
・・EU諸国では2019年にサマータイム廃止の動き


日本経団連のサマータイム導入根拠に反論
2007年8月27日執筆 医学博士 宮本順伯
著作権は宮本順伯および毎日新聞社に帰属 

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The article was written in August 2007, by Junhaku Miyamoto, M.D., Ph.D.




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