日本禁煙学会と日本タバコフリー学会
                      週刊新潮記事



目下、世間ではダイバーシティなる言葉が持て囃(はや)されている。すなわち多様性。しかし、煙草を巡る
世界ではこれに逆行する動きが存在する。それは喫煙者への白眼視だけでなく、禁煙推進派内での路線対立に
まで発展。五輪を錦の御旗に、禁煙運動家たちは、自分たちを「絶対善」と位置付けて喫煙者を撲滅せんと
一致団結しているかのように映る。しかし、「実は禁煙運動家たちも一枚岩ではないんですよね」・・・
こう指摘するのは、煙草業界の取材を続けているノンフィクション・ライターの窪田順生(まさき)氏だ。
ちなみに窪田氏は非喫煙者である。

日本には有名な反喫煙団体がふたつ存在し、ひとつは宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」の中に多くの喫煙シーンが
登場するのは問題だとケチをつけたことで物議を醸した「一般社団法人 日本禁煙学会」(以下、禁煙学会)。
もうひとつは「NPO法人 日本タバコフリー学会」(以下、タバコフリー学会)。「いずれも禁煙活動を行って
いる医師などの集まりですが、両者の主張は異なっています。簡単に言うと、禁煙学会は『施設内全面禁煙』を
目指しつつも、まずは施設内の分煙を勝ち取っていくスタンスです。対するタバコフリー学会は『煙草=社会悪』
であるとして、煙草の存在そのものを問題視しています」(窪田氏)

「日本の受動喫煙防止の取り組みは公共的空間での『分煙』から始まったため、かえって『全面禁煙』への
道が遠のいてしまった」と、医学博士でタバコフリー学会顧問の宮本順伯(じゅんはく)氏は、憤懣やるかたない
様子で語る。彼は2014年4月、「日本禁煙学会退会宣言」を行い、禁煙学会と決別。以後も、昨年出版した
著書(一匹狼の国)などを通じて、「元身内」である禁煙学会の方針を難じている。

「2007年11月、当時神奈川県知事だった松沢成文氏の意向で、屋内分煙を定めた『神奈川県公共的施設における
受動喫煙防止条例』作成への検討が始まり、2010年4月から施行されましたが、禁煙学会はこれを支持。しかし、
一度、分煙にしてしまえば、分煙のために設備投資した飲食店は、やはり全面禁煙にしてくださいと言っても
抵抗するに決まっています。カネをかけて店を作り変えたんだから、いまさら全面禁煙はないだろうと。つまり、
分煙は逆に施設内での一部喫煙を認めることの固定化に繋がってしまうのです」(宮本氏)。

一方の禁煙学会に訊(き)くと、「タバコフリー学会さんはやや過激な気もしますが、煙草による害を社会から
無くしたいと考えている点は一致していると思います」。だが宮本氏は、禁煙学会の「同志扱い」を拒む。
「分煙と全面禁煙は全くの別物です。両者をあえて混同するかのような言動は、言ってみれば純正品の効用を
宣伝に使って紛い物を売る商人のようなものです」。付言すると、「タバコフリー学会は、最終的に社会から
煙草をなくすことを目指していますが、私個人はそこまでは考えていません。煙がこもらない屋外の適切な場で
あれば、喫煙しても構わないのではないかと思っています」(宮本氏)。

原理主義的なタバコフリー学会内にも路線の違いがあるわけだ。なお、国会内でも、「東京五輪に向けて受動
喫煙防止を目指す超党派の議員連盟があるのですが、当初、会長に松沢さんが就く話が持ち上がっていました。
ところが、彼は予算委員会でも受動喫煙について質問するなどしてスタンドプレーが目に付くと、それこそ
煙たがられている。結局、松沢さんは事務局長におさまりましたが、それでも彼とは一緒に活動できないと、
議連への参加を見送る議員がいたほどです」(窪田氏)。

いずれにせよ、彼らが大好きな五輪は「多様性と調和」をテーマに掲げている。彼我の差に目くじらを立てず、
それこそ一服でもしながら、みんな仲良くしてほしいものである。無論、多様性の中から分煙ルールを守る
喫煙者が排除されることには努々(ゆめゆめ)なるまい。

引用:週刊新潮 2016年6月9日号、内容の趣旨を変ええることなく一部削除編集しています(宮本順伯)

 週間新潮に掲載されてきている1頁大の広告

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書籍:一匹狼の国



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