Picture source: NHK News 7、October 15,2019
台風19号の記録的大雨の影響で、長野市赤沼にあるJR東日本の「長野新幹線車両センター」が浸水、
北陸新幹線の車両30編成のうち3分の1に当たる10編成120両が水につかった。 国土地理院は
千曲川の堤防が決壊したことによる長野市の浸水被害が、JR東日本の「長野新幹線車両センター」付近で
最大深さ約4.3メートルに達したとの推計を明らかにした。航空写真や標高データなどを基に、算出した。
泥水が車両の運転台のすぐ下にまで達していたが、翌日の撮影では水が引き、列車の下のレールが
分かるようになっていた。しかし、車両がすぐに使用できる状態でないのは確実で、被害程度によっては
補修に相当時間がかかると思われる。補修では床下にある電気系統の機器の基板交換か、機器自体の
交換が必要になるとみられる。客室内に水が入り込んでいれば、座席の清掃や交換も必要となる。
Source: 産経フオト, 2019年10月14日
(L) Picture source: NHK News 7、October 15,2019 (R) Picture source: NHK
News 9、October 14,2019
JR東日本は10月13日夜、東京―長野間で運転を再開したが、翌日以降も当面、本数を減らして同区間で
運転を再開する。新幹線車両の浸水被害について、国土交通省鉄道局は「ここまでの規模は知る限りない」。
センターでは一時職員が孤立したが無事だった。同社によると、北陸新幹線はJR東日本所有のE7系
19編成、JR西日本のW7系11編成の計30編成で運用しており、水に漬かった10編成はE7系8編成と
W7系2編成。場所は屋外が7編成、屋内が3編成だった。120両の製造費用は約328億円。高崎―軽井沢間
の急勾配も高速で走れるよう強力なモーターを使っている。仮に浸水に遭った車両が長期間使用できなく
なれば、運行ダイヤへの影響が続く恐れがある。鉄道に詳しい工学院大の高木亮教授は「(車両の)機器
内部に水が浸入すれば完全にきれいにすることは難しく、機器の全交換が必要となるのではないか」と
指摘した。北陸新幹線車両の3分の1が被害に見舞われたことには「稼働可能な車両数が不足するので、
かなりの列車を運休せざるを得なくなる」との見通を示した。
Source: 信濃毎日新聞web, 2019年10月14日
洪水の水が引いた後の車両基地
(L) Apple farm, Hokuriku-Shinkansen truck line and Sugadaira Highland (R)
Super-express train, Hakutaka, is now arriving Nagano Station.
コメント
記録的豪雨をもたらした台風19号の本土上陸に関し気象庁は最大限のレベル5の警報を出して、テレビを
通じ何回も警告を出し、長野県大雨特別情報を発し千曲川氾濫の危険性を周知させていた。洪水の
可能性に関しては、今回氾濫の起こした近くの須坂市、中野市、小布施町も含まれていた。しかし、
国土交通省鉄道局は警報を軽視し、長野市の千曲川決壊の情報発信にも問題があってことが判明している。
JR東日本は氾濫予想地域にある車両基地の車両を、緊急に洪水の危険性のない駅構内とか、運行休止中の
走行車線に移動させる対策をなぜ講じなかったかが悔やまれる。
新幹線の車両基地の4割近くが浸水想定エリアに
NHKの調査によると、JR各社の新幹線の車両センターの40%近くの7か所が洪水による浸水想定エリア
にある。台風19号で浸水し、北陸新幹線の車両などに甚大な被害がでた「長野新幹線車両センター」
付近は、長野市のハザードマップで洪水による浸水が10メートル以上と想定されていた。新幹線を留め
置くJR各社の車両センターや基地などは長野以外にも全国に18か所あり、具体的には浸水の深さが
1メートル以上と想定されているのが、大阪 摂津市にあるJR東海の「鳥飼車両基地」、静岡県浜松市に
あるJR東海の「浜松工場」、熊本市にあるJR九州の「熊本総合車両所」、広島市にあるJR西日本の
「博多総合車両所広島支所」の合わせて4か所。
新幹線の車両は床下にモーターやブレーキなどを制御する電子機器類が集中していて、その部分が水に
つかると大きな被害を受ける。 修理は難しく基本的には機器全体を交換する必要がある。台風19号の大雨で
浸水し、大きな被害が出た長野市の「長野新幹線車両センター」は、昭和57年(1982年)など過去に
何度も浸水する被害を受けていて、関係者によると、建設にあたって過去の被害の記録などを検討し、
2メートルの盛り土が行われた。 平成19年(2007年) になって、長野市が100年に1度の大雨を想定した
ハザードマップを公表し、周辺の浸水は5メートル以上とされた。 国土地理院の推定によると、今回、
車両センターがある地区では、浸水した深さが最大でおよそ4.3メートルに達していた。
(L) 13 All Shinkansen vehicles arranged in a row on the raiway track.
(R) Shinkansen railway base in flooded areas
Picture source: NHK News 9、October 17,2019
NHK「ニュース9」放送では、昭和42年(1967年)、筆者が提言したように、新幹線列車を次々と走行車線に
移して並べ、鳥飼車両基地が完全に浸水したにも拘わらず、13の全新幹線車両を洪水から守った事実があり、
当時の国鉄マンはそうした事態を想定して予め訓練していた事実も報道された。今回の大型台風に対し、簡単な
損害回避策が全く行われなかった鉄道関係者に失望の念を禁じ得ない。
医学博士 宮本順伯
画像は日本経済新聞から引用
車両退避基準の欠如
今回の失態はJR東日本の水害対策の不備を浮き彫りにした。浸水した北陸新幹線の車両基地は、車両の退避
判断が遅れた。そもそも退避を想定したマニュアルなどが十分でなかった。車両基地から車両を退避させる
場所や基準を定めたマニュアルなどは全くなかった。しかし、長野市の水害ハザードマップで「車両基地が
浸水の可能性がある地域という認識はあった」だけに、対策がほとんどなされていなかった面は否めない。
氾濫した千曲川に近く、浸水は座席の肘掛けの高さまで達したという。車両の通路の下にある機器もダメージ
を受けた。「計画運休を実行しながら何故に車両避難を実行しなかった」失策の責任は誰がとるのであろうか。
参考記事: 日本経済新聞web, 2019年10月18日
結末
JR東日本は6日、台風19号による河川の氾濫で浸水した北陸新幹線10編成をすべて廃車とすると発表した。
浸水した車両の帳簿上の価値はJR東の持つ8編成が118億円で、JR西日本の2編成が30億円、合計で148億円
(120両の製造費用は約328億円)にも及ぶ。
JR東日本の深沢祐二社長は記者会見で「列車本数を減らしていることでお客様にご迷惑をお掛けしている」
と謝罪。「19年度末までに列車本数を100%に戻すべく、復旧に向けて全力を挙げる」と話した。北陸
新幹線は全部で30編成あり、このうち長野県の基地にとめていたJR東のE7系と、JR西のW7系の計10編成が
浸水した。車両の下のモーターなどの電子機器に被害があり、安全上、再び使うのは難しいと判断した。
JR東は台風に伴う計画運休などで、10月の売上高が120億円程度減ったといい、廃車により業績への影響が
さらに拡大する。北陸新幹線は現在、通常の8割程度のダイヤで運行している。ダイヤの完全復旧に向け、
2020年春までに上越新幹線に投入する予定だった新造車両のE7系5編成を北陸新幹線で使うほか、上越と
北陸の両方で使っているE7系1編成を北陸専用にする
Source: 日本経済新聞web, 2019年11月6日
BBC News
JR西日本は車両基地が浸水の恐れがある時は事前避難を検討
Picture source: NHK シブ5時 November 8, 2019
JR西日本は車両基地が浸水の恐れがある場合は事前避難を検討すると発表したが、多くの被害を出したJR東日本から、
その対策方式については発表がない。
Picture source: NHK総合 December 5, 2019
10月の台風19号で長野市内にある北陸新幹線車両基地が浸水したことを受けて、国土交通省はJR新幹線車両基地、
28か所のうち、16か所が洪水、浸水想定エリアにあることが分かった。それ故JR各社に対し、事前に車両を
安全な場所に回避させるルール作りを求める方針を打ち出した。また、運行に必要な新幹線の電気設備などの
洪水対策が求められている。国土交通省はJR各社や私鉄についても調査を進める。被害の大きさに比べ、遅きに
失した感があるが、大型台風のに備えた車両の移動避難を示唆しなかった国の機関と、避難訓練をを怠った
JR東日本に強い反省を求めたい。
医学博士 宮本順伯
JR東日本、新幹線基地約10メートルかさ上げ 浸水対策
Picture source: NHK BS1 December 7, 2019
JR東日本が台風19号で浸水被害に遭った長野市の新幹線車両センターの主要施設をかさ上げする方針を固めた
ことが分かった。地元のハザードマップに基づいて、2020年にも10メートル程度かさ上げするもよう。費用は
これから算定するが数十億円規模になるとみられる。各地で大規模な自然災害が起きる中、企業が自社の中核
設備の対策を急ぐ重要性が改めて浮き彫りになる。
新幹線車両センターは台風19号による千曲川の氾濫で、4メートル程度浸水した。車両に加え変電所や通信機器を
置いた施設などが浸水し、信号の電源設備が故障するなどの被害があった。電源設備が壊れ、北陸新幹線全線の
運行再開まで約2週間かかった。新幹線車両を退避させなかったことで車両が浸水し、118億円分の被害があった。
JR東は重要度が高い変電所や通信機器を置いた施設をかさ上げする。車両センターはもともと、長野市のハザード
マップで1000年に1度の大雨で10メートル以上浸水する可能性があるとされていた。1997年のセンター開業時には
2メートルかさ上げされていたが,不十分だった。JR東は長野市の基準に沿って10メートル程度かさ上げする模様だ。
Picture source: NHK BS1 December 7, 2019
車両の補修などに使う施設には止水板を取り付ける。車両を留置している線路は地面に直接敷いており、かさ上げ
は難しい。災害時は新幹線を駅や他の車両センターに退避させることで、車両への浸水を防ぐ方針だ。センターは
独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有し、JR東が借り受けている。復旧費用はJR東が加入して
いる保険でまかない、足りない分は鉄道・運輸機構に請求する。工事にかかる費用はこれから試算する。建設業界
では費用が数十億円程度にのぼるとみられている。 JR東の長野以外の5つの新幹線の留置施設も地元のハザード
マップで浸水エリアに指定されている。同社は今後は他の車両センターもかさ上げなどの対策を検討する。
Source: 日経新聞イブニングスクープ December 6, 2019
地球温暖化への危惧
長野新幹線車両基地浸水
2019年10月執筆 11月加筆
執筆 医学博士 宮本順伯
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This article was written by Junhaku Miyamoto, MD, in October and November
2019.
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