ICELAND



アイスランド


[左]スヴァルトセンギ地熱発電所から立ち上る蒸気 [右]レイキャビク国際空港


ヘルシンキ、コペンハーゲン経由、レイキャビク国際空港へ

地球の北の果ての島国、アイスランドは日本からとても遠い国である。直行便はなく、空港での接続待ち
時間を加味すると30時間か、それ以上かかる。今までロシアの領空を横切ってヘルシンキへ到着したが、
迂回せねばならないための時間ロスもある。一方、欧州からも北米からも直行便もあり、アイスランドは
そう遠い国ではない。

乗り換え地点のコペンハーゲンでチェックインしたスーツケースが、アイスランドまで積み込まれなかった
ため、アイスランド・ケプラヴィーク国際空港で調査を依頼し解答を待ったが、午後10時を過ぎていたにも
拘わらず、ホテルへのタクシーは辛抱強く待っていてくれた。まわりはまだ明るく、そこで見た光景は
溶岩で固められた延々と続く溶岩大地であった。


世界一の規模を誇るブルーラグーン温泉


スヴァルトセンギ地熱発電所は文字通り蒸気熱利用の発電所で、この島全体の電力および温水による地域
暖房をまかなっている。ブルーラグーンは世界的に有名な温泉リゾートで、世界最大の露天風呂と言われて
いるが、温泉が湧き出ているのではなく、地熱発電所からの約70度の湯を組み入れている。入ると、
とても気持ちがよい(日本以外の国では入浴時に水着を着用する)。

宿泊したブルーラグーンクリニックホテルは、ブルーラグーン温泉から徒歩数分のところにある。専門
医師が訪問し、皮膚病の治療にあたる。宿泊施設内には15の客室があり、マッサージ室、フィットネス
クラブがある。無論、施設内は全面禁煙である。スタッフは全員、親切である。


[左]地球の裂け目ギャオの溜水[右]シングヴェトリル

大西洋中央海嶺の地上露出部分であって、ユーラシアプレートが東に北米プレートが西に広がっている。
そのため各地でギャオと呼ばれる大地の裂け目が見られる。ユネスコの世界遺産に登録されているシング
ヴァトラヴァン湖を抱えたシングヴェトリルは、世界に先駆け西暦930年から議会民主政治が開かれた場所で、
当時の議会であったところに国旗が掲げられている。


ストロックル間欠泉

アイスランドでの見せ場の一つはストックル間欠泉であろう。かっては70 メートルもの高さで吹き上げていた
そうだが、現在では4分から8分くらいの間隔で30メートル近くまで 噴出する。規模ではイエローストーン
国立公園の間欠泉には及ばないが、その周囲には真っ青な温水池や湯ノ花で 埋まった原野が広がっている。


グトルフォス滝

ヒウィタ川の大渓谷にグトルフォス滝がある。その広さ、長さ、何段にも分かれて大量の水が流れ下る様は
壮観だ。滝に近づくにつれ細かい水しぶきが全身に降り注ぐ。ナイヤガラの滝も壮観だが、ここグトルフォス
とは、とても比較にならない。直ぐそばまですごい迫力で水流が迫り来る。ちょっとした油断で大きな水の塊に
飲み込まれてしまいそうになる。深く刻まれたクレパスは不気味だ。流れ落ちる大量の川の水が地球の割れ目に
そのまま吸い込まれてしまうような錯覚さえ覚える。その壮大さはたとえようもない。これだけの大量の水と
落差を見て誰もが考えることは水力発電所の建設であろう。20世紀初頭、何人かの起業家がその建設を企画した。
しかし、住民の反対と資金難のため断念したようだ。土地はその後アイスランド政府に譲渡され、この世界でも
稀に見る雄大な自然景観を守ることが出来たのである。

Helka Iceland
ヘックラ山の溶岩台地と車

この火山溶岩でできた原野を車で走破し、ヘックラ山周辺の大自然を堪能してきた。溶岩台地の原野のなかでは、
ただの点のような人間が、80年間ほどの人生であくせくしても、それは何万年もの時を経た地表の上では、
非常に小さな動きに過ぎないことを改めて認識する。

Skalholt  Iceland Hotel Ranga, Hella, Iceland
[左]スヴァルト・レストラン[右]ホテル・ランガ

溶岩台地からの帰路、スヴァルトに立ち寄ったが、ここはアイスランドで最初に主教管区のあったところで、
1796年までの、700年にわたって政治、宗教、文化、教育の中心となっていた。施設は1967年に全面的に
改装され、宿泊所やレストランなどがある。この日は木材をふんだんに使用しているホテル・ランガに宿泊した。
フロントには漢字で「千客万来」の額がかかっていた。しかし、その意味は理解していないようだ。


[左]スコゥガフォスの滝 [右]スキェイザルアゥルヨークトル氷河 

スキェイザルアゥルヨークトル黒砂と流水

フィヤトルスアゥルロゥン湖

[左]ヨークルサゥルロゥン氷河湖[右]海岸へ運ばれた氷塊

スキェイザルアゥルヨークトル 氷河は、アイスランドで最大で国土の8%を覆うヴァトナヨークトル 氷河の
南端に位置する。フィヤトルスアゥルロゥン氷河湖は、ヴァトナヨークトル氷河の麓にある。スコゥガフォス
の滝を含め、アイスランド本島の南岸を走る1号線ルートの沿道沿いに点在し、滝と氷河の雄大さと大自然の
すばらしさを堪能できる。ヨークルサゥルロゥン氷河湖はヴァトナヨークトル氷河 の一部で、1960年に氷河が
後退したあとに出来た(地球温暖化の影響と思える)。湖水に浮かぶ大きな氷河の断片が、青い水に浮かび
ながら、少しずつ北大西洋の海岸へ運ばれて消滅している。



[左]アイスランド最南端の ヴィック近くの霧に包まれているディルホゥラエイ[右] ヴィック沖の奇岩

アイスランド最南岸ヴィックの町を経て、ヘプンまでの旅程を終え、飛行機を乗り継いでレイキャビック経由、
アイスランド北東岸、アークレイリに向かう。

アークレイリは、レイキャビック首都圏の次に人口が多いが、その数は約18,000人。世界最大級の漁獲物の
加工場があり、エイヤフィヨルズルというフィヨルドの最も奥に位置し、天然の良港に恵まれている。アイス
ランドを環状に走る国道1号線(リングロード)が市内を貫いている。


[左]アイスランドの各地を結ぶ航空網 [右]レイキャビック・ヘプン間の小型航空機


グリーンランド海に面するスキャゥルヴァンディ湾の早朝

アークレイリはまた、アイスランド北部の重要な観光基地としての役割を果たしている。背後に雪山を抱え、
スイスの高原都市のようなたたずまいがある。グリーンランドからの寒流とメキシコ湾を起点とする暖流との
交差する地域で、冬の平均気温が0℃以下となることは少なく、夏、7月の平均気温は12℃と、晴れていれば
湿気もなく、とてもさわやかだ。朝夕のグリーンランド海の入り江の風景は正に神秘的で絶妙である。
アイスランドでも最も美しい光景の一つとも言えよう。



デティフォス

デティフォスは幅、100メートル、落差、44 メートル、毎秒、200 立方メートルの大量の川の水が一気に流れ
落ちる滝である。欧州で最大、最も力強い滝と評価されている。その轟音と流れ下る水流、立ち登る水しぶきは
正に圧巻である。しかし、黒々と混濁した水はまるで悪魔の水のようだ。



アイスランド北東部のミ-ヴァトン湖は溶岩の流れがラクスアゥ川を堰き止めて出来た。海抜、277メートル、
湖のなかには噴火の結果出来た40を超す小さな島々が点在する。水源は水面下で湧き出ており、湖水の水深は
平均、2mと浅い。活発な地熱活動により真冬でも完全には凍結しない。世界最大のマリモの群生地でもある。


[左]ナウマフィヤットル [右]ゴーザフォス

ゴーザフォスは神々の滝の意味で宗教的逸話がある。広大な溶岩台地から満々と水をたたえた川から轟音と共に
流れ落ちる。落差、12m とアイスランドの滝としては小ぶりだが、滝壺の近くに行くと、その迫力に圧倒される。
ナウマフィヤットル 一帯は、他の土地と違い、明るいグレイ・ブラウン色の地形が広がる。泥の池や硫黄の吹き
出し口などが点在し、活発な火山活動を見ることが出来る。「地獄の煙突」との異名を持つ、高さ2mほどの
火山石の隙間から激しく水蒸気が吹き出している。2004年に開設されたミ-ヴァトン天然露天風呂は、地熱で暖め
られた湯で温泉浴を楽しむ。


[左]火山石の隙間から激しく水蒸気が吹き出す[右]クヴェルフィヤットル山

巨大な丸みを帯びているクヴェルフィヤットル山は標高、462m、クレータの深さは140m、直径、1,000mで、
この種のクレータとして世界最大級である。およそ2,500 年前の爆発的噴火によって出来た。山頂からの360度
広がる景観はすばらしい。麓の登山道起点まで車で行ける。

アイスランド島を環状に走るルート1号線に沿って、アークレイリまでは風光明媚な道で、快適なドライブを
楽しむことが出来る。このあと、名残つきないアイスランド北東部地帯に別れを告げ、レイキャビックに向かう。



[左][中]レイキャビック市街 [右]夏の遅い夕日:23:40撮影の写真

レイキャビック港

アイスランドの首都レイキャヴィックの人口は、119,000人である[2022年現在、135,000人に]。中心街は
むしろ小さく、多くの観光名所が徒歩圏内にある。少し歩けばそこにはコンドミニアムや一戸建ての家のある
住宅街となる。色とりどりの屋根や色調を落とした建物の壁がレイキャヴィック独特の風情を醸し出している。
内装は北欧的なものが多く、シンプルで上品な雰囲気だ。

アイスランドでは使用される給湯や暖房などは地熱利用の地域システムによって賄っている。熱水は50キロ離れた
シンクヴェトリルの地熱発電所から運ばれて来ている。空気の汚れのないのが、レイキャヴィック都市圏の特徴だ。
天然資源にも恵まれ、新鮮な魚介類が豊富である。アイスランドは捕鯨国としても有名である。レイキャヴィック
の港には沢山の漁船に加え、アイスランド国旗を船体に表示した巡視艇も浮かんでいる。



アイスランドはヨーロッパ大陸から大きく離れ、国土の一部は北極圏にある。北海道と四国とを合わせた程度の
面積の島国である。国内電力の80%を水力から、20%を地熱発電により賄っている。1260年にノルエーの
統治下に、1397年にデンマークの統治下に、1944年にデンマークから独立した。



1986年10月にレイキャビクで開催された、レーガン米国大統領とゴルバチョフソ連共産党書記長との首脳会談は
有名である。多くの活発な闘論の結果、1987年に米国とソ連の間の中距離核戦力全廃条約が成立した。


アイスランドのすべての国際空港と国内空港は禁煙で、空港施設内では喫煙することは出来ない。 レストラン、
バー、クラブ、カフェは全面禁煙となり、 屋内に指定喫煙エリアはない。2007年に公共的屋内施設の全面
禁煙規制を実施した5ヶ月後に非喫煙者の心臓疾患が21%も減少したことが明らかになっている。1991年に
30%であった国民の喫煙率は、2020年には11.2%まで減少し、スエーデンの9.3%に次ぎ、ヨーロッパで最も
低くなっている [
Euronews ]。2013年には画像ベースの健康警告を導入、2023年現在、16のテキスト画像の
うちの1つで、たばこ包装の前後面の35% をカバーすることを義務化している [
tobaccocontrollaws.org ]。
その主要な目的は未成年者、若者が喫煙し始めることを防止することにある。ニコチンは一旦とりつかれると、
敏速に強い依存性をもたらすことは周知の事実である。


Human Development Index

Source:Allice Hunter - United Nations Development Programme
2021 年の人間開発指数 (HDI) HDI : アイスランド、 ノルエー、スイスは 共に 0.96, 日本は 0.93、米国は 0.921

アイスランドは、2021年現在、[人間開発指数:Human Development Index]が世界第一位である。
指数は平均余命、教育、識字及び所得指数の複合統計であり、アイスランド、ノルエー、スイスは共に、毎年、
高位を保持している。ちなみに日本は19位, 米国は21位、中国は79位である。


Iceland 英文目次
Arrival to Reykjavik Blue Lagoon Pingvellir, Strokkur Gullfoss Hekla Skogafoss, Vik Glacia
Akureyri, Husavik Dettifoss, Myvatn City of Reykjavik


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アイスランド旅行記日本語要約
2009年7月 執筆および写真撮影  2023年5月日本語版作成 医学博士 宮本順伯
Copyright(C) 2009 Junhaku Miyamoto, All rights reserved.

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