● 「タバコ中毒者が要職の席に座ることの出来る国」日本
第2次世界大戦後の世界の指導者に葉巻は不可欠でした。しかし、そうした時代は過去のものとなった
のです。タバコの有害性が確定されている今、そうしたスタンスは全く間違っていることに気付いたの
です。フセイン・前イラク大統領はタバコを常に手放しませんでしたが、新しい息吹を認識していなかった
のかも知れません。
闇の献金問題で取りざたされていた橋本元首相は、心臓病治療中 のロシアのエリチン元統領の前で
タバコを吸って世界の顰蹙(ひんしゅく)を買いました。その橋本氏は、2006年7月、東京都新宿区内の
病院で多臓器不全、敗血症性ショックのため死亡しました。享年68歳。橋本氏が大蔵大臣だった頃、
「健康を害さない程度に吸っていればよい」と自ら発言し、タバコの有害性を無視しておりました。だが、
2004年になって、健康上の理由からドクターストップがかけられ、強制的に禁煙させられておりました。
しかし、すでに手遅れで、橋本氏は長期間に及んだ喫煙行為の後遺症から逃がれることが出来なかった
のです。
一方、かってヘビースモーカーであったフランスのシラク大統領は、多額の費用をかけた「タバコ
全面戦争」を布告し、タバコ排除に乗り出ました。禁煙率向上の一手段として、フランス国内での
タバコ税を一挙に30%上げ、タバコ消費量の20%削減を成し遂げています。しかし、2006年5月、
日本の財務省はフィリップモリス社などタバコ会社から申請されていた一箱30円の値上げ申請を
20円とする圧縮指導介入を行いました。両国の政治哲学は全く対照的であり、健康に対する見識の
違いが鮮明に浮き彫りとなった形です。
人の上に立つには知識と判断力とが必要ですが、「喫煙常習者はそうした見識がない」と見な
される時代に入っているのです。「日本ではタバコ中毒でも要職につくことができるるのですか」との
外国からの皮肉発言もあります。「タバコ中毒者でも、団体トップになることが出来る社会」を批判
した言葉です。しかし、外国人も例外でなく、かってこのサイトで、ボーダーフォンCEOのグリ−ン氏
が新任当時、公の会合の席で喫煙していたことを指摘、こうした人が日本の会社を成功させられる
ことはないと批判しましたが、やはり2004年6月、業績悪化の責をとって、突如辞任しました。
大手スーパー、西友の平成15年12月期連結決算は最終損益が赤字を計上、2期連続で赤字
決算となったことはご承知の通りです。その西友が埼玉県三郷市に物流センターを建設することに
なり、起工式が、2005年2月に行われました。提携先のウオールマート代表とともに出席した
木内正雄CEOは、マスコミや来賓の前で得意げにタバコをふかしていましたが、こうした態度を
国民にさらけ出しただけでも、今後の業績発展は極めて疑問視されます。その理由は「自分や
他人の健康を守れない人、人の体にとつて有害な物を排除出来ない人は、やはり会社にとって
有害なもの排斥し、徹底した合理化を実行出来ない」からです。最強のスーパー、米ウォルマー
トが日本市場で迷走することにならないとよいのですが。
物流センター起工式から5ヶ月後の2005年7月、このサイトにて危惧したことが的中し、木内CEO
は業績悪化の責任をとって辞任しました。西友の当期赤字は従来予想の3.5倍にふくらむ見通しで、
ウオールマート側はいらだちを隠せないようです。
社会のリーダー的地位の、医学部の教授でも毎日喫煙を続けている人がいる、大学構内を
すべて禁煙としても教職員室では吸える、県庁庁舎内を全面禁煙としても自民党議員控え室では
喫煙出来る、こうした矛盾はいくつでもあります。こうした喫煙者は、自らを律することなく市民の
先導役として行動することが出来るのでしょうか。
2002年11月3日にNHKが日産自動車の下請けから自立し、会社再建のために努力している
株式会社のドキュメントを放映しましたが、会社社長はパソコンを見ながら喫煙、従業員控え室でも
全員が喫煙、再建計画を練る上層部の会議では全員の机に灰皿が置かれ、タバコの箱を握りながら
の討議( ・・喫煙習慣者に言わせると、タバコの箱は気持ちを静めるお守り!!の役目なのだそうだ
・・ )、その間にも他の役員は喫煙・・・・、職員、全員がタバコ中毒で果たして会社の運営を
軌道に乗せるのが出来るのでしょうか?心配なのはタバコを吸わない従業員の受動喫煙(副流煙)
被害です。
政権を担っている自民党本部の会議室や議長席には常に灰皿が用意されていることに、全く疑問を
抱いていない後進性、・・ オセアニア、欧米の国で、政治の舞台にタバコの灰皿の置いてある国は
日本以外でもあるのでしょうか。テレビの画面で見たことがありません。国内では、今なお、タバコ
中毒者が多数、社会上層部に君臨し、政治を司っている、・・・ そうした環境が、喫煙抑制を実行
する上で、大きな障害となっているのです。
2015年には喫煙の脳に及ぼす悪影響も報告されています。カナダ・モントリオール大学の
研究では、500人以上の喫煙者と非喫煙者の脳のMRIには大脳皮質の厚みの調査に明らかな相違が
見られたと報告、タバコが認知機能に影響している可能性を示唆しました。
日本は世界の異端者 タバコ副流煙を有害と認識していない社会 「受動喫煙問題」軽視の姿勢から転換する医師
タバコ病医療費はタバコ収益の数倍 タバコ中毒者が要職の席に座ることの出来る国」日本
タバコが人を変える タバコ会社はタバコ痴呆の民衆を好む
タバコ中毒者が要職の席に座ることの出来る国」日本
執筆 2005年6月「禁煙席ネット」 主宰、医学博士 宮本順伯