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NHK放映 対決番組 
公共スペースでの全面禁煙は是か非か
Distinguish between right and wrong of a total smoking ban in public places



公共スペースでの全面禁煙、是か非か

2人のバトラーが対面論議、時間限定のコロシアムで激突する討論番組「ガツン」。公共の空間は全面禁煙に
すべきかをめぐり、2人が真っ向から議論を交わした。それぞれの持ち時間は25分で、制限時間内で相手を
どう論破することができたか、NHK放映内容の概要を「禁煙席ネット」が紹介する。このサイトは一人の視聴者の
立場から書いたもので、放送内容の一部を省略している。意味を明確にするため、( )にて言葉を補足した
ところがある。引用した演者の発言を出来るだけ原語に近い形で記載しているが、全く同一でない部分もある。



出演者紹介


蟹瀬(かにせ)誠一氏  明治大学教授。AP通信社、AFP通信社記者を経て、フリージャナリストとして活躍、テレビ朝日、
TBSのキャスターなどを歴任した。かってヘビースモカーだったが子供が生まれた時に一念発起して禁煙、「周りの人の健康をむしばむ、
公の場所では絶対に禁煙にすべきです」と主張、公共空間の全面禁煙は世界の潮流であると話す。



黒鉄(くろがね)ヒロシ氏 本名、竹村弘。ギャグ漫画が多いが、近年の歴史漫画も「黒鉄歴画」といわれ、高い評価を
受けている。テレビ朝日など、テレビ・コメンテーターとして出演している。全面禁煙に断固反対、これまでの歴史を捨て去るような
急激な喫煙規制に対し異を唱えている。黒鉄氏は番組が終了するや否や即座にタバコの火をつけた。どうやらNHKスタジオ内での
喫煙は自由らしい。



 

バトラーの対決:先行するのは全面禁煙に断固反対する黒鉄氏

黒鉄ヒロシ氏: 物事はなんでもそうなんですけれど、一元論者と一元論者とがぶつかると不幸な
歴史がある。世界史的にそうなんです。タバコを例にとると、片や「吸うな」、片や「吸わせろ、吸いたい」で
すと、どうも悲しい結果しか導き出されないんで。追い詰められているのはわれわれ喫煙派の方でして。
どうやらデータ主義というのですか、データによって「肺癌になる」「体に悪い」「副流煙」「受動喫煙」との
話になるのですが、そうかなと思っていると、ふと気がついたのは日本人は寿命ナンバーワンの国ですね。
不思議なことに先進7ヵ国のうち一番タバコを吸っているのも日本(人)なんです。一番タバコを吸う日本人
が世界で一番長寿であるというこの不思議さ、これによって他のデータもちょっと眉唾ではないかしら。
データをまともに信用していいのだろうか、ということで今日我々が信用しかかっているデータも疑って
かかる必要がある。

(VTR)平均寿命は世界一


国際比較: 今の日本人の平均寿命は82.3歳と世界一、 日本人の喫煙者の割合は2005年には30%以上と
先進国7ヵ国でトップクラス、日本人喫煙男性の割合は40%とアメリカの2倍以上


実はタバコを吸う人と吸わない人とが仲良く暮らしていた時代がづーと続いていたんですね。あるときに、
タバコを吸わない人が吸う人の肩をたたいて「タバコ吸うなよ」「健康に悪いよ」「やめろよ」と言ったのです。
確か、1960年代だったと思いますが、この理由を考えて見ますに、それまでは「不足の世の中」であった
のですね。それが充足して手に入るようになったときに、未来を見てふと不安感を感じて、なにか罪人と
いうか、犯人を捕まえたくなったんですね。その時にデータなるもので犯人を作った最初のものはタバコ
ではないかと思います。

(VTR)データが一人歩き

「受動喫煙による肺癌の死亡率は2倍になる」。その見解は国立がんセンターの平山雄博士が1981年に
発表、今も受動喫煙の恐ろしさを伝える研究として広く知られている。夫がタバコを吸わない場合、10万
人当たり、その妻は9人が肺癌で死亡するが、タバコを吸う場合はその倍の15人が死亡する。

しかし、この見解に意義を唱える人物がいる。「実際は正しくデータをきちんと吟味して手にしているかと
いうと、その点に疑問があります。」 獨協大学放射線科、名取晴彦博士である。データー処理によって
「大きな差を印象づけている。結論だけが一人歩きしているのではないか」と名取博士は指摘する。
これに対する反論を伺いたい。


(左)(中)1981年、平山博士の受動喫煙に関する論文
(右)自称「名取春彦」こと洪誠秀氏

(注釈)「名取春彦」は、洪誠秀医師のペンネームらしい。著書に「タバコ有害論に異議あり!」(出版、洋泉社)がある。この本の中で
タバコ有害論の根拠となっている疫学統計は「有害である」という結論が先にありきの、悪質な操作に満ちたものだったことを徹底追及
したとする。さらに「今日も元気だ、たばこがうまい!」とタバコを認めていた社会が「禁煙ファシズム」社会になるまでの背景を本に
書き記している。
なお、2008年10月現在、獨協大学によれば「名取春彦」という職員は存在しない。しかし、名取春彦こと洪誠秀という名の医師は
20年も前から放射線科に籍がある。大学放射線科助教授の話によると、大学病院で仕事をしている形跡は全くなく、得体の知れない
人物だそうである。



タバコは元気の源、タバコは女性にとって動くアクセサリー



 蟹瀬誠一氏: 日本は長寿国だとの話ですね、タバコを吸っているのに長生きではないかと言うが、
これはずいぶん飛躍した議論なのですね。人間が長生きするための要素というのは、環境があったりとか、
DNAの問題とかいろいろのたくさんの要素があって長生き出来る。タバコだけを一つの要因と取り上げて、
それとの相関性だけでものを語るのは実はデータを逆に無視したような議論で、一見そうかなと思うけと、
そこは大分違うと思うのですね。

私は実は白状しますが、若いときはヘビースモカーだったのですよ。だけど、自分の子供が生まれたときに
一念発起して、タバコの煙はいろんな害があって体に悪いことだんだん分かってきたのですよ。それまでは
タバコを吸っているとかっこいいとか、ぽいっと捨てる姿がいかにもやくざな感じがしていいかなという思いが
あったわけのですが、それは無知から起きたことですね。調べれば調べるほど、タバコを吸っている人の
健康が害されることが分かりますね。問題にしたいのは「タバコを吸いたくない人が吸わされている、その
受動喫煙ですね。平山先生のデータがあやしいと言われるが、受動喫煙の話が最初に出てきたのは、実は
80年も前なのですよね。それからいろんな研究が積み重ねられて、平山先生のデータはそのなかの一部なん
ですよ。


WHOタバコ規制枠組み条約を採択した会場と講演する事務局長



ちなみに、世界146ヵ国でタバコを規制する条約が今、調印されている。日本もそうですよ、(日本も)批准
しているのですね。データ至上主義といってもこのデータはおそらく誤りはないだろうとの範疇にまで来て
いて、アメリカのカルモナ公衆衛生局長は2006年にこういっているのですよ。「議論は終わった。受動
喫煙は単なる迷惑というだけに留まらず、健康への深刻な脅威である。」ここまで言い切っているんですよ。

(VTR)罪な煙

タバコの先から流れる副流煙には一体どんな物質が含まれているのか。タバコの煙の正体は実は霧状に
なった細かいタール。フィルターを通した茶色に変色した付着物を分析機にかけるとタールに様々な化学
物質が含まれていることを示している。その中には強い発癌性のあるベンゾエチレンが含まれている。
煙に含まれる物質のうち、発癌性のあるものは40種類にも及ぶのである。

タバコの煙の中にどのくらい有害物質があって体にどのくらい悪いかを、私は取材でタバコをたくさん
吸っている人の肺と吸っていない人の肺を開いたのを見ていますが、もう一目瞭然ですよ。黒鉄さんの
肺は真っ黒なんですよ(黒鉄さん平静を失って中途発言を求めるが司会者に発言を控えるように諭される)。
そこのことはもう認めていただくしかないですね。世界146ヵ国も認めているのですよ。だれか一人の人が
言い出してどうこうという話でなくて、もうこれは一般常識なのですよ。私が言いたいのは他の人に迷惑を
かけないでください。タバコを吸いたい人はどうぞ吸ってください。他の人に害を与えないでくださいという
ことなんですよ。黒鉄さんのところにはワンちゃんがいますよね。うちも飼っているんですがね。ワンちゃん
の餌にこれは害があるというものをあげますか。そこのことをよく考えていただきたいですね。それが
中心のポイントですね。


黒鉄ヒロシ氏: うちの犬はタバコを吸っています。

平均寿命のことはご指摘になった通りなのですよ。実は医療の進んだ国、あるいは慎重な国は(長寿国に)
入らないんですよ。にも拘わらず、まことしやかにあれだけを見たらタバコは全く害がないように思えて
しまうんですよ。ですからデーターの扱い方は非常に危なくて。で、1998年にご承知のWHOですね、
事務総局長、グロハレムブラントというノルウエィの女性が就任したのですが、そのときの演説が「タバコは
人殺し」と、ここからセンセーショナルに入るんですよ。女性のすごさと言いましょうかか、これを見てください。

(VTR)やりすぎではないか

世界の禁煙運動が加速したのは2003年に世界保健機関(WHO)がタバコ規制枠組み条約を採択した
ことに始まった。当時のWHOグロハレムブラントという事務総局長が就任した時の演説で「タバコは
人殺しである」と痛烈に喫煙批判を行った。これを契機に(健康)警告文は(タバコ)パッケ-ジの3割以上の
(スペース)に、国や地域によって急進的ともいえる禁煙の動きが高まって行った。 禁煙は新築
アパート・マンションでも、子供の同乗する車の内でも。ついに禁煙先進国、タイでは健康被害を強調する
写真の掲載が義務つけられることに。アイルランドでは強烈なテレビシーンが登場した。

あのですね、国際癌研究機関、ここではタバコと肺癌との因果関係が全く立証できないと、マウス、ラット
の実験で、ニコチンやタールをいくらすり込んでも発癌しないと発表した。これに対し、グロハレムブラント
女史がそれを取り消しなさいと命令を出したんですね。発癌の要因なのですがタバコだけではなくて、排ガス、
煙突の煙、アスベスト、農薬散布、ストレス、そういうもので発癌するということが分かっていながら、あたかも
タバコが犯人かのように扱われることにより他のものが見えなくなってきている。最近ですよね、発癌性がある
というアスベストはアカウントされていなかった。これが出たことにより何割かがアスベストに行ってしまった。


各国の取り組みを紹介

世界規模で公共の場での法律による全面禁煙が施行されている

タイ国では喫煙の有害性を写真を使用して国民に伝えている

アイルランド政府はテレビで積極的にタバコの有害性、受動喫煙の危険性を広報


蟹瀬誠一氏: アスベストで多少減ったと言っても、日本の場合、癌死の23%は肺癌なんですね。
その90%程度は主な原因はタバコなのです。原因を一つに特定するのは難しくって、複合的な原因で
引き起こされるんです。しかし、調べた結果、一番大きいのがタバコの煙だとういことが明らかなことに
なっているのですよ。


こうした結果を一番いやだと思っているところはどこですか。タバコ会社です。タバコを売って儲けている
のです。その会社がすでに、これは健康に害があります、発癌性物質が入っています、これを吸ったら
あなたの健康は害されますと認めたんです。日本語の表現はまだ生やさしいですよ。ヨーロッパなどへ行くと
「あなたを殺します」などと書かれているのですよ。彼らはそれを認めたんですよ。 黒鉄さん、それを
我々は認めなければならないのですよ。(これは)世界の潮流ですよ。

(VTR)
公共スペースの禁煙は欧米だけではなくアジアや中東でも進んでいる


中国では全国を回って禁煙を呼びかけている男が話題になっている。吸っているタバコを取り上げて警告ビラを手渡しているが、
ほとんどの人は笑って応じてくれる。男はにこにこして「サンキューベリーマッチ、ハッハッハー」


英国では街中に設置してある関しカメラでぽい捨てを監視、ポイ捨てした人にスピーカーで呼びかけ警告、確実に成果が上がって
いるという


VTRを見てもわかるように、公共の場所でをタバコを吸うのはやめる時期に来ているのですよ。タバコは
やはり害がある。吸いたい人は吸ってもいいんですよ。ただ、他の人には迷惑をかけない。公共の場所は
どこかというと、病院、学校だとか、それから道なんかもそうなんですよ。小さいお子さんが歩いている。
くわえタバコの人が(子供の目の高さに)持って歩いている。煙だけの問題だけではなく事故が起きること
もある。


 
黒鉄ヒロシ氏: 

タバコを持った(手の)高さが子供の目の高さにある。ポイ捨てが火災に結びつく。その通りですが、では刃物に
よる事故はどうかというと、これは刃物が悪いのではない。それを使用する人が悪い。タバコもモラルの問題で、
タバコとは分けて考えていただきたい。私もタバコを簡単にいいとは思っていないんですよ。もう一つは、
アルコールには実は発癌性が認められている。タバコ以上に。にもかかわらず、皆、住み分けて飲んでいる。
人がどう生きて行くかの自由さ加減を(奪って)・・・例えば山奥で吸っている人をサーチライトで照らし出すように、
タバコを吸っている人が監視されていることに非常に怖いものを感じますね。一元論者にどんどん追い詰めら
れて、新幹線では吸えない、タクシーでは吸えない、飛行機の中では吸えない、路上でも吸えない、隣から戸
をがらがらと開けられて「お前吸っているだろう」と言われては、ファシストと言えば言い過ぎかも知れないが、
こうして追い込んで行く様は「禁酒法」と同じくヒステリックな状態になっているのではないか。

(VTR)悪法の教訓

1920年にアメリカの連邦議会で「禁酒法」が可決され実行された。しかし、その後、密造酒による健康被害や
マフィアによる治安悪化が市民の生活を脅かすようになったので、成立13年後に廃止された。米国の「禁酒法」
は悪法の代名詞として後世に記憶されることになった。



禁煙法は禁酒法と同じような悪法


こうした(禁酒法制定の)動きになった背景が何かと考えた時に、それは集団ヒステリーみたいなものなんですよ。
悪いものは悪いし、マナーは守らなきゃいけない。蟹瀬さんはタバコ会社が(健康の害を)全部認めて(タバコの
箱に)書いていると言っていますが、あれは運動が始まって、言葉が悪いのですが、恐喝と言うのでしょうかね、
あれは書かないとタバコの不買運動が始まるとか、言論の自由なはずの日本でありながら、こんなことは初めて
ではないかと思うのです。自由を謳歌しつつ、皆で意見を交換しながら、(タバコを吸う人と、吸わない人が)
お互いに譲り合うところに行かないかという気がするのですがね(拍手)。


 蟹瀬誠一氏: タバコを吸ってはいけないとはいっていない。お吸いになりたい方はどうぞ吸ってください。
ただし、他人の迷惑にならないようにしてください。この一点だけなのです。自由を奪っているのではない。
ただ他の人の健康を犯さないでください。

タバコの先から流れるタールが飛んでって気化して、べちゃとくっついて、また他の人の肺の中でまたタールに
なるんですよ。髪の毛について臭くなる。衣服について臭くなる。非常に荒っぽい言い方だが、道を歩きながら
人にツバを吐きかけていると一緒なのですよ。そのことをタバコを吸っている人は気づかない。われわれの
自由を認めてくれ。なんとか一緒に住めないか。これはずいぶん昔にアメリカで議論されたことなんですよ。

「禁酒法」はいろいろと誤解が多くて、もともとヒステリックなことで起きたことではない。聖教徒の人たちは
お酒を飲むことを嫌っていた。当時の穀物などが大変不足していて、とても酒など造っている場合ではないと
いう経済的な事情が一つあつた、男たちが酒場に入り浸りとなった、けしからんと女性が声をあげた、この3つ
くらいの要素があつた。しかし、これは間違っていたというは明らかなことで世界に広がらなかったでしょう。

タバコ規制の場合はそうでなく、規制しましょうとする国が世界で140ヵ国以上にまで広がり世界の潮流と
なっている。なぜそうなっているか考えると、(タバコを吸って)他の人に迷惑をかける、愛煙家の方には言葉は
きついかも知れないが、反社会的な行為なのですよ。社会でみんなが幸せに生きて行こうとするときに
反社会的なことが広がるのはやっぱり困るわけです。



(VTR)JTによれば、日本人の喫煙者総数は2700万人と見られている。民間の調査会社が喫煙者、1000人に
アンケートを行ったところ、なんと55%の人が大切な人のために禁煙したいと答えている。



蟹瀬誠一氏: タバコを吸っている人もあまり片意地を張らないで。本心はやめたいんだ。私は自分で禁煙した
からよく分かりますよ。やめたいと、やめたいと思いながらお酒のみに行ったらつい吸っちゃた、ご飯食べた後
なんとなく寂しいからつい吸っちゃった。これがずーと続いたのですね。このところは、もう一回、本音で自分の
心の叫びを聞きましょうよ(拍手)。


 黒鉄ヒロシ氏:  せっかくのお勧めですけど、50年弱ですかな、吸っていいまして、年に2回検査に行く
のですが、全く影がなくて。こういうことは例にならないいいんですね、個体差ですから。(肺癌に)罹る人も
いれば罹らない人もいる。タバコが原因でなくとも肺癌になる方もいらっしゃる。

言論統制のお話しをいたします。どんどん追い詰められて行く。例えばタバコが絶滅されたとします。この後に
健康を夢見る人はターゲットを変えてくると思うんです。われわれの先人の(残した)絵画であるとか文章、
映画、テレビジョンでもタバコのシーンがたくさんあります。最初は「神様からの贈り物」と言われてきたの
ですが、今は「悪魔からの贈り物」とように言われていますね。


文化面でこんなひどいことになりやしないか見ていただきたい。(VTR)


タバコはダンディズムの象徴

英雄、文化人に愛されたタバコ

人類の生み出した嗜好品、タバコ。1000年に及ぶ歴史の中で絵画、映画、文学、文化面で大きな
役割を担って来た。それはダンディズムの象徴であり、名画のシーンにはタバコが必ず登場してくる。
多くの英雄や文化人に愛され、心の癒しをもたらした。これを禁煙の形で排除、消し去ってしまうのか。


一番怖いのは「生と死」、「健康と不健康」、これを2極化して「死は悪いものだ。不健康はいけない」、ここから
エロチズムは出ないのですよ。我々は必ず死にますので、いかに潤沢に楽しんでいくかですね。タバコを
吸うことが楽しいなど、そんな短絡的なことを言っているのではないですよ。タバコを取り巻く文化が楽しい。
それを追い詰められて行きますと一つのものを失うのではないか。タバコ一本からいろいろな知識が生まれ
て来る可能性、詩歌、文章、絵画、・・・それでもやめましょう。一人で鍵をかけて吸うようにいたしますれど、
どんどん追い詰められて行くと、例えば最後(タバコを)吸わなくなっいた時、心の中でタバコを吸うことを
イメージしている時に、肩をたたかれて「お前、こんなことを考えているのではないか」とそこまでやられた
ときに、怖い怖い人間の文化の最後の時代がそこまで来たような気がします(拍手)。



 蟹瀬誠一氏: お話しになった文化は非常に多様性であるということは一つの大きな重要な要素です
よね。それから、その時代の善悪で判断されるとは必ずしも限らない。その文化が普通のわれわれの日常
生活に持ち込まれた時、許容できるものか出来ないは物差しがひとつ必要になってくるのですね。例えば
サムライの時代に「切腹」というもがありました。切腹はサムライの美学で、あの当時は文化、伝統でした。
しかし、今の社会では、「切腹しても結構ですよ」「どうぞ腹をお切りください」とおっしゃる方は恐らく相当
少ないだろう(笑い)。

売春なんかもそうですよね。そういう時代があって映画になり小説になり、そういう場面があることで、我々は
人の苦しみとか女性の虐げられた姿を見たり聞いたり、読んだりしてある種の感動を覚える。それは立派な
文化なのです。立派な文化だから我々の日常生活に受け入れましょうかというと、当然女性の権利とか実際に
行われていることなどを考えた時に、これは正しくない。社会のルールとして(そうしたことは)やめましょうと
決めている。タバコの問題も実は同じことなのですよ。文化論で語った時、何らかの形で反社会的な行為で
あれば、これを押さえて行く必要がある。

(VTR)やれば出来る全面禁煙


全面禁煙に踏み切った店がある。香り高いワインを売り物にするイタリアン料理のレストラン。「タバコ一本
吸われるとお店の香りが全部飛んでしまう。」とレストランのオーナーはその理由を語る。禁煙とした後の
売り上げは増えている。タバコがよく似合ったバーでも遂に全面禁煙に踏み切る店も登場した。その理由は
「5年くらい前からでしょうね、急に喘息が進行してしまったので、全面禁煙に切り替えた。」マスターの
健康によい。「新たに来ていただけるお客様の割合でいうと女性の方が多いです」と話す。


食べ物の香りを楽しんでもらいたいので思いきって全面禁煙とした
その後売り上げが増えた


仕事中にタバコの煙を吸い込んで喘息になったので、バーを全面禁煙としたら女性客が増えた


時代はこういうふうに変わりつつあるのですよ。アメリカは禁煙先進国ですが、最初は反対の議論がすごかった
のですよ。「けしからん」「商売の邪魔だ」。今は決してそんなことはない。「タバコを吸っていない状況の方が
はるかに気持ちよく幸せに暮らせる」「タバコの煙のないところでおいしい食事できて、おいしいワインが
飲めていいね」。こういう意見の方が多くなっている。むりやりにファッショで上から押さえつけてやったん
ではない。実際にやった人たちが「ああ良かったね」と気持ちよい思いでそれを受け入れているのが全体と
しての姿です。勿論、かたくなに「けしからん」という方はいらっしゃいますよ、アメリカにだって(大きな拍手)。



 
黒鉄ヒロシ氏: (日本で)禁煙にしたのは寿司屋が最初でしたね。それでもいいのです。その店の
方針ですからね。ただ、私はそこに行かなくなっただけのことです。東京ドームは出来たときから禁煙です
から行かないのですが、神宮(球場)で「全面禁煙」というのに、空が開いているのですよ。「全面禁煙」と
言われると恐怖感を感じるのですよ。この調子で行くと「シガーバーまで禁煙にせよ」と訳の分からんこと
を言われるのではないか。

そこで住み分けをしたい。タバコを吸う人だけのバー、吸わない人のバーがあってもいい、中に、半分ずつ
両方の人が離れて座るバーなどがあってもいい。昔のバーですね。こちらも吸わない人がいるなと思うと
早めに消す、店も換気を良くして、そのようにして、もう少しゆとりのある禁煙がよい。「タバコが体によい
から健康のためにどんどん吸いなさい」と言っているのではないのですよ。文化の接着剤的な意味で。

ですが(吸う人は)今後も徐々に減って行くでしょう。ここで一気にタバコをなくして、脅迫しているのではない
のですが、こんなことは本当は言いたくないのですが、JTの総収入からいろいろのお金が使われている。
だからどうだと言われると困るんですが、手当をしてから徐々に行かないと。今度はタバコを値上げまで
言っていますね。どんどんいじめて欲しいくらいで、一箱一万円でも私は買いますけれども(大笑い)。
(喫煙者は)減るでしょう、圧倒的に。減ったときに税収ががたーと減るんですね。今度は恐らくアルコール、
他のものを探して税金をかぶせて来るんですね。そのときに、もう一度タバコにと、皆さんはまー、そう
おっしゃらないと思いますが、そういう先行きのタバコの力があるのですね。経済だけではないのですけど。

(VTR)全面禁煙というけれど


居酒屋ではタバコはつきものと語る利用者たち


利用者の声:お酒を飲むときにはタバコを吸います。タバコは必要。居酒屋にとって特に必要。大事なこと
です。主張します。

神奈川県では全国に先駆けて公共スペースでの喫煙を規制する条例案を発表した。居酒屋やレストラン
には店内を全面禁煙にする。出来なければ完全に分煙にするという選択を求めている。73店舗を構える
大手居酒屋チェーン店。すでに22店舗に完全分煙とする設備投資を行った。私たちが設備投資をしました。
しかし、何年で回収できるかをしっかり考えておかなければならない。だが、分煙には多大のコストが
のしかかり、
小さな店では重荷だと言われている。


黒鉄ヒロシ氏: タバコの害がうんぬんというのはデータを科学的にもう一回調べるチャンスががあれば
調べればよろしい。ただ形の問題なのですよ。追い詰め方がいかにも性急で、例えば、タクシーの全面
禁煙は、もとは大分のタクシーが経済的にうまく行かないので、苦肉の策として全面禁煙にしてみたら
運営(成績)が伸びた。タクシー協会の投票によって禁煙が決まったのならいいんです。決まったことが
タクシーだけならば良いのですが、他にも起きたときに、反抗できないのですよ。「タバコは体に悪いんだ」
と錦の御旗で持ってこられると。


蟹瀬誠一氏: 性急な禁煙の動きが出来てきたというのは、実は日本だけを見ていれば、そうなの
です。先ほど申し上げたように受動喫煙はもう80年も前にその言葉が出てきているのですね。その後
ずーといろいろと研究されてきて、やはり社会で幸せに暮らすためにはタバコというものは規制した方が
よいだろうと国際的な条例が作られた。ですからアメリカ、ヨーロッパでは(禁煙法を実行してから)大体、
喫煙者は2割くらいに下がっているのですね。それはフアッショだというのは誤解があると思うんですね。

それからタクシーのお話しの場合、いくつかの裁判がすでに行われていて、タクシーのドライバーの方が
タクシーの中でお客さんがタバコを吸うとドライバー自身、健康を実際に害されたし、次に乗るお客さんに
対しサービスが良くないと裁判を起こされた。東京地裁でしたかね、ドライバーの方の主張を認め、会社に
賠償金を支払いなさいと命令したのですね。禁煙とするのはおかしいのではないかと言うことは議論に
ならないと思います。

「全面」という言葉ですが、黒鉄さんが言われた通り、ものすごく強い。これは「公共の場所ではタバコを
吸うのをやめましょう」という風にキャンペーンすべきと思います。

(VTR) 禁煙の経済効果


タバコ収入より禁煙規制した方が、その経済的効果は大きい。カリフォルニア州では禁煙によって(公共的
施設を全面禁煙した後に)、15年間で9兆円もの医療費を削減出来たと今年、発表された。規制により
タバコ販売量が減少し、36億箱分減少、肺癌や心臓病など喫煙が原因とされる患者が大幅に減った
ためだからと指摘している。

国立がんセンターの望月友美子博士は日本に於いてタバコによって年間11万人の人が亡くなってるのですが、
その人々の病気の治療に要した医療費を試算した。喫煙者の疾病の治療費は年間1兆3000億円余計に
かかっている。損失は医療費だけに留まらない。タバコによる病気や死亡により労働力損失は5兆8500億円、
タバコの火の不始末による消防費用が2200億円、合計年間7兆4000億円の損失が発生している。タバコ税
は2兆数千億円の収入の3倍ほどに相当する。


カリフォルニア州では全面禁煙としたあと、15年間で9兆円もの医療費を削減、
肺癌(がん)や心臓病が大幅に減少したとの研究を発表



蟹瀬誠一氏: これを単純に試算するとタバコを吸わない人たちが毎月、4万円を喫煙者のために支払って
いることになるのですよ。要するにタバコを吸っている人の尻ぬぐいを毎月、4万円ですよ。4万円あったら
大分おいしいものが食べられますよね。それを吸っていない人が支払っている。これは社会の中でちょっと
いびつな構造なのですよ。この辺のことを理解していただいて、何度も申し上げますが、吸っちゃいけないと
いっていないですよ。ただ、「公共の場所で吸うのは迷惑になるからやめましょう」、こういう風に申し上げて
いるのです(大きな拍手)。



喫煙者の疾病の治療費に年間1兆3000億円、タバコ病による労働力損失は5兆8500億円、
タバコの火の不始末による消防費用が2200億円、合計年間7兆4000億円の出費が発生



黒鉄ヒロシ氏:冒頭に戻るよるようですが、先生はタバコによる死亡者が11万人とおっしゃるけれど、
これは実はタバコによるとは限らないのですよ。アスベストもあれば公害もあれば、いろんなものがある。
それを全部タバコにかぶせていらっしゃる。実際こうであるや、なしやはやってみないと分からないのですよ。
びっくりしてしまいますよね。お互いにびっくりしているわけですから、この結果を甘んじて受け入れます
けれど、ただこれだけでなく違う方法も考えておいた方が、タバコは全面パーになってもいいんですか。
これでないという答えが出たときはみんなが幸せに暮らして行くために、ちゃんと手当をしておいた方が
良かろうということと、それから一元論でタバコをすべて悪魔のようにして追い詰めて・・・・・・

(持ち時間終了で中断)。


蟹瀬誠一氏: 私も共感するところはありますし、自分はタバコを吸っていた人間だし、タバコがすごく
嫌いなわけではない。ただ世の中人のためにらないことだったら、そこのことは少し我慢してもらって、一人で
吸って他の人には迷惑をかけないようにしてくださ
い。

(VTR) 「分煙はムダ」

どこにもある喫煙室。しかし、いくら厳重に仕切りしても分煙は完全ではないとの事実を発表した人がいる。
喫煙者の吐く息は部屋の汚染源であるということですね。産業医科大学の大和浩教授である。一体、
なぜ分煙ではダメなのか。それを証明するために実験をしてもらった。使用するのは粉塵(ふんじん)計。
空気中の含まれる有害な細かいタールの濃度を計測する。まずは1本、タバコを吸う。吸い終わったら呼吸を
止め、直ぐに粉塵計に息を吐き込む。最初の4, 5回は交通量の多い交差点(濃度)の数十倍に相当する
粉塵を計測、その後も吐き出した息、30回目まで粉塵が含まれているという結果が出た。教授は
「肺から全く煙が出てこなくなるまで屋外で過ごしてもらうしかないと思います。そのためには、タバコを
吸い終わって数分間は建物に戻ってはならないことが必要だと思います」と語る(拍手)。


建物内喫煙室や特急列車の喫煙ルームは無駄な投資(右の写真はJR東海新幹線列車喫煙ルーム)

喫煙者が息をした後には多量の有害物質が放散され喫煙室を出た後、
喫煙を禁止している空間に放散される



蟹瀬誠一氏: とても息苦しい社会が出てくる感じがないも知れませんけれど、大げさな言い方かもしれ
ませんが、社会全体をよくして行くためには、自分の子供、孫、・・・ 黒鉄さんのワンちゃんはタバコを
吸っているとのことですが、
うちの犬にはあまり吸わせる気にはなりませんので、・・ そういう人たちの
ことを考えた時、やはり公の場所はきちんと全面禁煙にして、そして、分煙が全部ダメというのではなく、
いいシステムで分煙出来るのいであれば、それはそれとしてオプションとして考えたらいいと思いますよ。
いま一番考えられることは、少なくとも病院から始まって、役場になったり、学校になったり、そして
お酒を飲むいろいろな人の集まる場所、タバコの嫌いな人の集まる、そういう場所では、やはり、
(タバコを吸うのは)黒鉄さん、我慢しましょう(大きな拍手)。


筆者コメント

1時間ほどの討論番組であったが、蟹瀬誠一氏は医師ではないにも拘わらず、非常に論理的に世界で
進行している全面禁煙がなぜ行われているかを分かりやすく解説し、分煙は無駄と批判した。一方、
黒鉄ヒロシ氏は喫煙者の立場で喫煙者擁護の立場を述べた。もう何年も言い尽くされた内容だが、
漫画風な言い回しはとてもおもしろい。ただ、頻繁に出てくる「手当てする」の意味がよく分からない。
資格がはっきりせず、名取春彦こと、洪誠秀なる人への取材など問題は残るものの、視聴者を最後まで
引きつけていたNHKの演出と、情報をユーモアを交えて討論した出演者たちに敬意を表明したい。

蟹瀬誠一氏はテレビキャスターとしての豊富な経験に基づき堂々と発言していた。その内容については、
満点に近い評価であるが、減点は蟹瀬誠一氏が「愛煙家にとって」の言葉を使用している。言葉の
前後から考えてスモーカーの用語を使用したものと思われるが、これは「喫煙者」と言うべきだろう。

「日本では喫煙者が非常に多いのに世界有数の長寿国ではないか」と黒鉄ヒロシ氏はタバコ有害根拠に
疑念を抱いている。これに対し蟹瀬氏が反論している。しかし、非常に重要な「タイムラグの問題」に
触れていない。

今の高齢者は若いときにはタバコに触れる機会が今とは比べ格段と少なかった。タバコを売るコンビニ
もなかったし、街にあふれるタバコ自販機もなかった。そうしたことも相まってタバコを吸い始めた年齢が
今の若者より遙かに高い。若年から喫煙を始めた人は若死にすることが統計的に認められているが、
ここで喫煙年齢と平均寿命との間にタイムラグがあることを認識して欲しい。憂うべきことは今から30年後、
40年後の日本人の平均寿命が、今のままの地位を保てるかどうか疑問視されていることである。

最後に「いいシステムで分煙が出来ていればオプションとしてそれも良い」と述べたが、終了時間が
迫っていたため、「いいシステム」の内容については話さなかった。「分煙」にした場合の、そこで働く
従業員は健康被害を受けることについて一言加えて欲しかった。30秒ほどでしゃべれたと思うが残念で
ならない。すべての国の受動喫煙防止法(禁煙法)には、必ずそのことが記載されている。いま審議
されている神奈川県受動喫煙防止法案で「分煙」を認めたのは大きな誤りである。喫煙出来る空間で
人が働く限り、
「分煙」は健康社会では到底受け入れることの出来ないメカニズムである。




トピックス:
 カリフォルニア州で9兆円医療費削減 (英文)
 アイスランドにおける全面禁煙規制施行理由
 Women in Hong Kong have the longest life expectancy in the world.
2011年、香港の女性の平均寿命は86.7歳、男性が80.5歳:男女とも世界のトップに躍り出た(英文)

「公共的空間を分煙してもタバコの害は防げない。屋内全面禁煙は世界のルール」
日本タバコフリー学会 2013
日本の対策「前世紀並み」分煙は効果なし WHO
 日本の受動喫煙対策は世界最低レベル
厚生労働省白書  2016
世界の49カ国では、学校、飲食店、公共交 通機関などの公共の場で「屋内全面禁煙」とする法規制を実行

鉄道列車内に喫煙場所を提供している会社(それを認めている政府は)世界中探しても日本国以外にはない
小池都知事は東京都条例で飲食店の分煙制度温存化を図る
喫煙問題総合検索(日本語)


対決番組 公共スペースでの全面禁煙は是か非か
2008年10月 執筆 2013年2月情報加筆 2015年9月情報加筆  2016年9月情報加筆 2018年8月情報加筆
日本タバコフリー学会顧問 医学博士 宮本順伯
2008年10月7日にNHK総合テレビにて放映された画像、討議内容を参考に編集制作
Copyright (C) 2008 Junhaku Miyamoto, PhD. All right is reserved.




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BS 朝日ニュースター報道特集「喫煙大国ニッポンの行方」 
ゲスト 医学博士 宮本順伯
Dr.Miyamoto talks much a smoking control in Japan
at a studio of Asahi BS Televison.

NHK 対決番組の5年前に放映された喫煙規制問題





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