経済優先政策のため新型コロナに関する政府の専門家会議を廃止し政権傘下へ




6月27日は感染者が全国で100人を超えるなど、再び感染拡大の様相を呈し始めた新型コロナ。その数日前の、6月24日の会見で西村康稔
コロナ担当相が突然、新型コロナに関する政府の専門家会議を廃止すると発表したことに波紋が広がっている。 同時刻に日本記者クラブ
で会見をおこなっていた専門家会議の尾身茂副座長は、記者から廃止について訊かれると「私はそれを知りません」と発言。つまり、西村
コロナ担当相は専門家会議メンバーに一言も報告もなく、その廃止を会見で一方的に通告したわけだ。

改めて説明するまでもなく、専門家会議は「ダイヤモンド・プリンセス」号の集団感染対応がおこなわれていた2月に設置され、これまで
政府にさまざまな提言をおこなってきた。新型コロナ対応の助言の役割を担ってきた政府による組織に対し、専門家会議が会見を開いて
いる最中(時間帯)に廃止を一方的に打ち出すというのは、敬意の欠片も見当たらない。背景には、緊急事態宣言をめぐる安倍官邸と専門
家会議の対立があった。 



安倍首相および安倍官邸は緊急事態宣言の発出に消極的だったが、それを動かしたのは専門家会議による「欧州のように突然、爆発的に
感染が広がる可能性がある」といった提言があったためだ。しかし、その解除については、経産省出身で「経済優先」の立場に立つ今井
尚哉首相補佐官を筆頭とした官邸サイドは一刻も早い解除実行を行いたがっていた。その「障害」となったのが、解除に慎重な姿勢を
示した専門家会議の存在だった。経済優先で自粛を解除して行きたい安倍官邸が、それに反対する専門家会議を切り捨てたのだ。
6月26日付の日本経済新聞は、こんな舞台裏を報じている。・・5月の大型連休が明けて政府が緊急事態宣言の解除を急ぐ政府と専門家の
考え方に溝が生じ始めた。専門家会議内で「緊急事態宣言は1年継続すべきだ」といった早期解除への慎重論が出ていたためだ。安倍
官邸はまず、経済活動を再開させるべく、専門家会議に経済の専門家を投入しようとし、それを専門家会議に拒否されていたというのだ。
この「経済の専門家参加拒否」に安倍官邸は逆ギレし、それなら今の専門家会議を解散させてしまえとなったらしい。



専門家会議座長が会見で政府の責任押し付けを示唆、一方、官邸と厚労省は会見を阻止しようとする。安倍政権にとって、専門家会議が
責任押し付けと政治利用の道具でしかなかったことの証左だが、実際、専門家会議では以前から、そうした安倍政権のやり方に不満が
高まっていた。西村コロナ担当相による廃止発表と同時進行で行われていた6月24日の専門家会議の会見でも、そのことはうかがい知れた。
この日の会見は「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方」を政府に提言するものだったが、会場は厚労省や官邸ではなく日本記者
クラブ。そして、会見で脇田隆字座長は、感染拡大への危機感の高まりから専門家会議が積極的に情報発信した点を「前のめり」に
なったと語りつつも、「国の政策や感染症対策は専門家会議が決めているというイメージがつくられてしまった」と発言した。

安倍首相は何かあると「専門家の意見を聞き判断」と述べていたが、専門家の意見を聞きもせず打ち出した政策を、あたかも専門家の
提言があったかのように語ってきた。例えば、全国一斉休校についても、安倍首相は「ここ1ー2週間が極めて重要という専門家のご指摘を
いただいた」などと説明したが、その後、脇田座長が国会で「必ずしも議論していない」と答弁したように、実際は完全に官邸主導で
決定したことだった。また、緊急事態宣言の期間延長について国会で問われた際にも「最初に緊急事態宣言を出したときから、いわば
これは専門家のみなさまの分析、ご判断に我々は従っている」(4月17日衆院厚労委員会)と述べ、専門家に責任を押し付けていた。
その直後、専門家の意見を無視して解除に踏み切った。




専門家側は「無症状あるいは軽症の人が感染拡大を強く後押ししている可能性がある」と文書をまとめていたものの、政府側が「パニックが
起きかねない、無症状の人に対しては何もできない」とし、最終的に「症状の軽い人も気がつかないうちに感染拡大に重要な役割を果たして
しまっている」という表現になったという。積極的な検査によって感染者をあぶり出し、感染を広げないために無症状でも隔離をおこなって
経過観察するべきだという指摘は当時から出ていたし、「無症状でも一律入院」という指定感染症の縛りによる医療機関の逼迫を懸念するの
ならそれを見直す対策をすべきだったのだ。



そもそも、「帰国者・接触者相談センター」に相談できる目安を「発熱が4日以上続いた場合とした4日ルール」もそうだった。PCR検査の拒否
を正当化し、感染の拡大、重症化の大きな原因となったこの「4日ルール」は2月17日、加藤勝信厚労相が「最終的に専門家の座長と相談して
こういう数字を決めさせていただいた」と説明して発表したのだが、専門家会議では「4日ルール」に異論が噴出していた。それで加藤厚労相が
脇田座長とかけあって独断でこの目安を発表した。つまり、この4日ルールに科学的根拠はなかった。すべては安倍政権と厚労省が検査体制の
キャパシティ不足をごまかすために強行した。



専門家会議の後継組織「コロナ感染症対策分科会」は、御用化して経済優先を推進する、専門家がまとめた提言や見解を事前に検閲して
修正、削除し、話も聞かずに決定した政策までを、安倍首相は専門家の意見があったかのように装ってきた。今回の“責任主体は政府に
ある”という専門家会議の総括は、その点で当然のものだ。しかし、それさえも政府は妨害し、挙げ句、その提言の文書までをも変更
させていたのである。 無論、こうした政府による検閲を受け入れ、ときには「接触機会の8割削減」と提唱しながら「最低7割」など
と安倍首相が根拠も示さず目標を緩めたことに追随したり、政府と同じように、PCR検査抑制論に立った専門家側にも問題は数々あった。
そうした検証も早急に必要だ。

しかし、絶対的に確保されるべき専門家による自由な議論・意見を封じ込めるような動きを政府が行ってきたことは根本的な大問題だ。
こうした専門家会議の“抵抗”に西村コロナ担当相が激高し、根回しもなく先走って「専門家会議の廃止」を発表した。


(右)影の実力者、今井首相補佐官:政府が打ち出した一世帯につき2枚の布マスクを配布するという施策に世論の多くが唖然とし、
郵送費含め466億円もが費やされるが、これにも今井補佐官が関わっている



今井首相補佐官や西村コロナ担当相が「国民の安全より経済最優先」の「目の上のたんこぶ」でしかない専門家会議をさっさと解体し、
今度は自分たちの思い通りになる会議体をつくり上げようとしている。つまり、下部組織としてより政府のコントロール下に置かれる
可能性があるのだ。しかも、西村コロナ担当相の“ボス”である今井首相補佐官は、前述したように感染拡大という国民の健康の危険も
一顧だにせず「経済最優先」を突き進め、完全に安倍首相も今井氏の言いなりとなっている。6月27日の感染者は全国で再び100人を
超えたが、これまでの“最悪の新型コロナ対応”が、今後はもっと悲惨なことになる憂いは強い。

資料参考:日本経済新聞、朝日新聞 2020.6.28 校閲責任者 医学博士 宮本順伯


経済関係者、マスコミ、弁護士、鳥取県知事などを加えた政府のコロナ対策分科会メンバー一覧
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経済優先政策のため新型コロナに関する政府の専門家会議を廃止し政権傘下へ
The article was written in JUne 29 2020, by Junhaku Miyamoto, M.D., Ph.D.
コロナウィルスとの戦い 最終更新日 2020.6.29


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