神奈川県受動喫煙防止条例
INDEX
1」県民アンケート調査と神奈川県受動喫煙防止条例への取り組み
Review of the opinion survey on the Kanagawa residents toward a smoking
ban
in public spaces
2」神奈川県受動喫煙防止条例骨子案と横浜元市長などの反応
Reactions to the proposal for the smoking ban in Kanagawa Prefecture
3」全面禁煙提案から分煙案も採用へと変更、条例への筆者の提案
Do not accept the ordinance to support to provide the separate smoking
space in a restaurant.
4」分煙を認めることは劣悪な労働環境を神奈川県が条例で裏書きすること
The separate room proposal is equal to that the Kanagawa Prefecture officially
approved
employees to work in the toxic tobacco-smoke space.
5」NHK報道番組と筆者のコメント
Why NHK supports to create the smoking space in a restaurant in the ordinance
proposed by Kanagawa Prefecture?
6」受動喫煙防止条例導入の根拠が疑問視される規制内容
The Kanagawa Prefecture ignores the basic reason why we should establish
a smoke-free law.
7」 重大な禍根を残す「悪法」神奈川県受動喫煙防止条例
The Kanagawa ordinance for a smoking ban will result in a serious injurious
effect to
the future tobacco policy.
Kanagawa Pref. New Anti-smoke Law should be abandoned to protect the employees'
health
in the places where they work.
8」悪法と断定出来る神奈川県受動喫煙防止条例に反対の嵐
Many firm owners opposed for new Kanagawa Law for smoking restriction.
9」『分煙』は法の正義に違反する行為
The way to separate the working space with full of tobacco-smoke is against
the
workers' justice which is guaranteed by the constitution.
10」神奈川県受動喫煙防止条例はなぜ「悪法」なのか
The reasons why the Kanagawa Pref. New Anti-smoke Law is the world's worst ordinance
in view of the protection of workers.
A separate smoking room proposal for Kanagawa Prefectual smoking ban
飲食店も規制前提に・・・しかし、知事が禁煙条例の骨子に示したのは「分煙」だった!
松沢成文知事は2008年9月9日の記者会見で、受動喫煙防止を目的に制定を目指す
「神奈川県公共的施設における禁煙条例」(仮称)に対する県としての基本的な考えは、
レストラン、カフェ、居酒屋、ホテル、旅館、カラオケボックスについては禁煙か、
分煙かを事業者が選択するとした。
禁煙条例の骨子、禁煙か分煙かの選択は条例が決めるのでなく事業主が決定
Kanagawa smoke law suggested the owners of restaurant and hotel to divide
their private premises into a smoking section and non-smoking section.
公表された神奈川県知事公式サイトで、松沢知事は「神奈川県が受動喫煙防止条例を
立ち上げた理由」を述べている。内容は非常に理知的な申し分ない論文だ。
しかし、その同じ知事が「神奈川県案」として発表された内容は、「禁煙」か「分煙」かを
事業主が選択するという。これを知ったとき、失望を越えてただ暗然とした。条例成立を
非常に期待していただけに、「分煙」設定の表示をテレビ画面で見たときは我が目を疑った。
「分煙」を認めることは受動喫煙防止法の趣旨に相反する行為であり、条例設定の意義
そのものを否定するものと分かっているのだろうか。知事が分かっていれば、そのような
提案は絶対に行わないはずである。
なぜ「分煙」が悪いのか。タバコの煙が禁煙席側にもれて来ることがあるから。では、
「天井から床まで完全に遮断し、空調システムを全く別個のものにしたらよいのではないか」
という考えが浮上する。しかし、そうした「完全分煙」でも解決できないきわめて
重要な事柄がある。
完全分煙の最大の欠点は、喫煙セクションに立ち入る従業員が多大の健康被害を受ける
ことが明らかなことだ。ほとんどの国の「受動喫煙防止法:禁煙法」でも、その目的に、
そこで働く人が健康被害を受けないようにすることが記されている。すべての人には
職場で健康被害をうけないで働く権利がある。もし、神奈川県で従業員が立ち入ることの
出来る「分煙」を認めるなら、それは劣悪な環境で労働を強いられることを、条例という
法律で裏書きすることになる。
もう一つの「分煙」の大きな欠点は「全面禁煙」と「完全分煙」との店舗が同時に存在する
場合、「完全分煙」の店に客が流れ、「全面禁煙」の店の営業成績が低下する経済的な
問題がある。その結果、「完全分煙」出来ない狭いスペースで営業している飲食店は
廃業に追い込まれる危険性さえも発生する。生活が脅かされるような条例には誰もが
反対するのは当然である。
こうしたことはスイス、ドイツでも問題視され、安易に妥協したポルトガル、スペインでは
小さな飲食店ではタバコが自由に吸える。妥協を排除した英国、アイルランド、米国
カリフォルニア州、カナダオンタリオ州などでは医療費削減、癌、心疾患の大幅な減少が
報告されている。
(注、2013年6月)ドイツではバイエルン州などでレストランなどの全面禁煙を実施している。
また、スペインでは分煙設定が誤りだったと公式に認め、今やレストランを含む屋内施設で
全面禁煙規制を実施している。
法律という「受動喫煙防止法」を作るなら将来、それが「悪法」だと批判されないことが必要だ。
反対が多いから、皆の理解が得られないから、自民党内閣のもとではタバコ規制は難しいからと、
劣悪な現状を追認するような中途半端な法律は作らない方がよい。
私の世界喫煙規制検証旅行ではっきりとしたこと、そこに共通していたことは「屋内全面喫煙規制」
である。「完全分煙」を法律で認めている国は少数であり、その場合でも「喫煙スペース」に
従業員が立ち入ることを禁止するなど従業員の健康に配慮している。
かつてニューヨーク市では時限立法で「喫煙室」を認めたことがある。それは2006年1月までの
期限付きで、レストラン、バーで実施された完全分離した「喫煙室」の設置だ。すでに時効と
なっており、いまやニューヨーク市にレストラン、バーの「喫煙室」は存在しない。
参考までにそのときの規制内容をご紹介する。
(1)出入口の扉をレストラン側につけてはならないこと、(2)いかなる食品や酒類を
この「喫煙室」に提供してはならないこと、(3)飲食店従業員は最後の喫煙者が部屋を離れてから
15分以上経過し、かつ、その後「喫煙室」として使用しない場合に、始めて入室出来る制限を
義務づけた。そして、もし2回以上違反した場合は市当局は「喫煙室」の閉鎖を命ずることが出来る。
「分煙」はたとえ完全に仕切られた喫煙室であっても、そこで飲食サービスが行われる限り、
絶対に認めてはならない。先に述べたように、条例で「分煙」を認めることは、繰り返すが、
劣悪な環境で労働を強いられることを、条例という法律で裏書きすることになる。
松沢知事は「実効性ある受動喫煙防止の条例を不完全ながらも成立させるためには、譲歩は
やむを得ない」と述べているが、「分煙」を認めると、それは単に、日本も批准したWHO
タバコ規制枠組み国際条約違反となるばかりでなく、健康社会への道から遠く離れることになる。
そのことを改めて考えて直して欲しい。
English version
『分煙』は法の正義に違反する行為
神奈川県受動喫煙防止条例に関する初回アンケート調査
条例に関する見解(段階を踏んで実施することが円滑に進める上で必要)
受動喫煙防止条例(禁煙法)施行後のカリフォルニア州で9兆円の医療費削減
NHK対決番組「ガツン」公共スペースでの全面禁煙
インドで職場の全面禁煙を実施
禁煙広報活動に540億円の寄付 (マイクロソフト会長とニューヨーク市長)
タバコ規制枠組み条約第8条とそのガイドライン
労働者の保護を謳った受動喫煙防止法の基本原則を踏みにじった世界最悪の神奈川県条例
分煙制度は不可、神奈川県の過ちを繰り返すな!
「純正品の効用を引用してまがい物を販売する商人」松沢英文
室内全面禁煙は世界のルール
『分煙』は法の正義に違反する行為
2008年9月執筆 2009年2月加筆 2013年6月加筆
「禁煙席ネット」主宰 医学博士 宮本順伯
(世界の受動喫煙防止法が主な研究テーマ)
★『禁煙席ネット』 サイトへのリンクは自由