1960年、アイゼンハワー大統領の招待で皇太子夫妻がワシントンDCを訪問した時には、病院の
仕事が忙しく、3日後に中心街に出てみましたが、たくさんの日本国旗が立っていました。
また、一人のアメリカ人が片言の日本語で話しかけて来ました。
かねがね自家用車が欲しいと思っていたところ、新聞広告で、ある個人から1957型のプリモスを
800ドルで売りたいとの記事を見て、直接本人に会い購入しました。1ドル360円の時代でしたが、
白塗りで屋根は黄色、タイヤ交換に50ドル掛かったので総額は850ドルでした。日本では200万円
以上する車なので本当に夢のようです。
Plymouth by Chrysler
早速、1週間の休暇を利用して、米国東北部を友人と一緒に旅行して来ました。バルチモア、フィラ
デルフィア、ニューヨーク、ボストンなどの都市を通り、ニューハンプシャー州、バーモント州を
越え、カナダ国境近くのアメリカ側ナイアガラ滝を見物、ワシントンに戻りました。米国の道路は
非常に良くできており、大都市間には立派な高速道路が完備しています。往復、6本の道と立体交差が
スタンダードです。時速、90km 以上の高速で進みます。当時は高速道路はまだ無料化されていな
かったので、有料橋を含めると、何とガソリン代金よりも高くつきました。一定距離置おきに休憩所が
あり、完備した洗面所、食堂、みやげもの店、ガソリンスタンド、自動車整備店などがあり、洗面所
には髭剃り用のコンセント、手を乾かす空気乾燥機も設置され、何の不自由もありません。
US Interstate Highway 1960---
紅葉に彩られたコネチカット州の美しさはとても言葉では言い表せません。途切れない雄大な風景、
それを縫って広がる多彩な配色、霧の間に浮かび上がった湖のほとりに立つレストランは、美しい
白人の女性が愛想よくサービスしてくれて、室内雰囲気共に、生涯忘れることの出来ない素晴らしい
ところでした。バーモント州では日本人大学教授の家に泊めて頂きましたが、アメリカ到着以来初めて、
味わい深い緑茶とご飯をふるまわれました。
カナダ国境近くでは、フランス地名も少しずつ目に留まり、ラジオから流れて来るフランス語の音楽
放送が楽しさを増幅させてくれます。買い物のお釣りにもカナダ貨幣が入るこむことも少なくない。
アメリカ人は48時間、何の制約なくカナダとの往来が出来るので、全く同じ国のようでもあります。
今回の3000km 以上にわたる自動車旅行を通じて感じたことは、ニューヨーク市などの都会の汚れと、
北東部の田舎のきらびやかな美しさとの明確な違いでした。
宮本順伯 1960年10月 20歳代後半記
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