マッキンリー山国立公園 1963



今は東京・北米間、東京・欧州間では、ノンストップ便が当たり前ですが、1990年頃までは、途中給油
のため、必ずアラスカのアンカレッジ空港に寄港していました。シカゴから帰国した際の1963年8月、
機中の窓から見たのは、ロッキー山脈上での激しい雷に遭遇した時の稲光の、とても恐ろしい光景でした。
しかし、その後に機上から俯瞰した夕暮れ後の氷河の、静止して音もなく横たわる姿は不気味なほど雄大で、
物凄いものとして脳裏に刻まれました。アンカレッジ空港への到着時は既に夜で、ここで一泊しました。
あいにく市中のホテルが満室だったためハワイ人の方と同室で一夜を過ごしました。翌朝、ホテルを出て
食した[1ドル・ブレックファスト](1ドル=360円 ) には驚きました。全部、食べ切るのは至難の技で、
かなりの量を食べ残してしまいした。

翌朝、マッキンリー山国立公園に向かいました。アラスカ鉄道に乗り込み、マッキンリー山の入口の駅で
下車、ホテルにチェックインしました。今は全く跡形もないのですが、当時のホテルの周りには非常に
沢山の野兎 (Hare) が庭に群れていたのを鮮明に記憶しています。翌早朝、マッキンリー山麓行きの
貸切専用バスに乗りました。バスは途中でマッキンリー山の全貌が見える場所で停車、乗客はこぞって
写真撮影に専念しました。バスの終点の地域で全員と一緒に野外で昼食弁当を食べましたが、その時、
突然、へら鹿 (Giant Moose) が目の前に現れ、そして急ぎ立ち去って行きました。


1963年に撮影したMt. McKinleyとGiant Moose


なお、北米最高峰、標高 6,190 メートルのマウント・マッキンリーの名称は、2015年にデナリ[Denali]と
改名されました。山の周辺地域に住むコユコン アサバスカン族は、何世紀にもわたって使用していた名称でした。
2014年9月に同じ場所を訪れていますが、その雄大な姿は全く変わりなく、そこに聳え立っておりました。




林野に一本引かれたアラスカ鉄道線路を後にアンカレッジに戻りました。空港から東京行の便に乗りましたが、
その時に支払った出国税の後に残された手持ちの現金は、何と、25セント硬貨一枚だけでした。

8 mm-film video 1963: Anchorage, Mount Mckinley- Mount Denali, Alaska: Revised in 2024
コダックが発売した極めて初期段階のカラー8ミリフイルムを使用、
1963年のアンカレッジ街の風景、 エスキモー[イヌエット]の踊りに始まり、当時内務省の管理下のあったアラスカ鉄道からの
車窓風景、アラスカ山脈群や原生林の景観、自家用車の乗り入れを禁止した道を大型バスで ツアー、北アメリカ大陸の最高峰、
標高は6190mの雄大なマッキンレー山[デナリ山]を仰ぎ、トナカイ、雷鳥、野兎の群れなどを8 mm フイルム動画撮影した。


羽田空港に着陸したその夜に開催された空港特別室での帰国歓迎会直後に、大きな不幸が待ち受けていた。
私の米国就任を非常に喜んでくれた
が、脳出血で帰宅途中で急死するなど想像だにしていませんでした。

このため、大学で臨床研究を続けることを断念し、生活のため、十分な準備のないまま、一ヵ月間の休院のあと、
父の後を継いで開業しました。



帰国前に米国の著明製薬会社から[注射一本で3か月間避妊効果]の臨床研究を委託されていましたが、母校の
慶応義塾大学を訪れた時、人工授精で有名だった故 産婦人科飯塚理八教授に「大学講師の資格もない者が何を言う」
と門前払いされた経緯があり、60年以上前の先見的な研究が葬り去られてしまいました。もしも実現していたら、
今のアフリカ諸国の人口爆発を阻止するのに大いに貢献したと思われ、残念でなりません。


宮本順伯 1963年8月 20歳代後半記
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2023:
90 年の人生を振り返った時、懐かしく思い出されるのは、若かりし頃の思い出である。
一見、常識を越えた発想があり、それを 実行するだけの活力があった。特に20歳代は、
見るものすべての感受性が豊かで積極的、高年の世代でのそれとは、とても比較できない。
国内で医師として毎日を、診療に明け暮れする生活を繰り返し、老後に引退するだけの
人生が、満足できるものかを問われた時、答えは見つからない。人生は一度だけのもの。
悔いのない一生でありたい。




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1962年撮影、2024年に編集済ビデオ動画はここから再生
 
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