マキナック島訪問記 1961



1961年10月に、病院からの二日間の特別休暇と土日の休日、計4日間のかかて、予てから計画していた
ミシガン湖一周の旅に行って来ました。途中の都市、ミルウォーキーを訪問しました。ミルウォーキーに
はヨーロッパ風の寺院が多く、そばで微笑みかけた少女が印象的でした。市内の一角には1875年から
2025年の街角を再現した大規模なヨーロピアンビレッジ、博物館があります。

シカゴからミルウォーキーまでの高速道路は素晴らしく、時速、120キロで北へ急ぎました。北部の
ウィスコンシン州では延々と続いた畑も白樺の林と湖水の点在する多湖地帯となり、交通量は非常に少なく、
美しく彩られた紅葉の林と、どこまでも続く立派な舗装道路は、何か夢のような世界でした。赤、黄と、
それぞれが違った色調の木立と、それらを引き立たせる白い木肌、透き通って広がる小さな湖がありました。
湖畔の草むらの一角で車中泊しました。寒さの強まる中、真冬の下着に着替え、予め用意していた厚手の
毛布にくるまって休みました。秋の夜の空を見上げると、星が幾つも幾つも、瞬いていました。

使用したPlymouth car


翌朝は朝早く目を覚ましました。あたりはまだ薄暗く静まり返っていましたが、むこうから何か黒い動物が
やって来ます。どうも狸のようです。半ば枯れ果てた草むらに囲まれている私の車には一向無頓着で、水を
飲むと引き上げて行きました。次に来たのは神経質そうな白い背中の縞のスカンク、同じく水を飲み込んだ
後に過ぎ去りました。あたりが明るくなるにつれ、水鳥が声高にさえずり始め、白樺の木立を朝日が照らし
始めました。木立の間からは雁が群れをなして飛んで行くのが見えた。湖のきれいな水で顔を洗い、再び北へ
向けて出発しました。ミシガン州に入り、小さな湖の湖畔で休息し昼食としました。持ってきたコカ・コーラ
を水に冷やし、涼しく吹き抜けるそよ風のもと、リンゴを食すると本当に身も心も安らいで来ました。

Porcupine Mountains Wilderness State Park: Diverted from picture postcard


いろいろと想いをめぐらしているうちに時も過ぎ、名残の尽きない湖を後に、スペリオール湖に面した
ポーキュパイン山州立公園へと急ぎました。スペリオール湖は世界最大の真水の湖と言われ、フランスの
探検家が[最高の湖]と名付け、先住民、インデイアンが[偉大な水]と崇めていた湖で、その透明な
美しさは素晴らしいの一語に尽きるでしょう。色とりどりの紅葉を前景に、丘より俯瞰した湖岸のライン
に無数の枯れた木立が並び、澄み切った湖の水が、どこまでも広がり夢のような美しさでした。その深み、
広がり、色調といい、生涯、忘れることの出来ない素晴らしさでした。ポーキュパイン山の山頂近くまで
車で上がり、少し歩いて山頂に到達、大きな湖が地表に広がり、隙間なく広がる森の間を水流が細く、
長い軌跡を描いておりました。

去ることをためらいながら次の目的地へ車を走らせました。途中、給油に訪れたガソリンスタンドで
「君はカナダ人でしょう」と言われましたが、カナダ人と間違えられたのは初めてでした。もっとも、
外国人はカナダ人しか見たことないのかも知れません。その日はスペリオール湖の湖畔で車中泊し、
ターカメノン フォールズへ向かいました。この州立公園は、米国ミシガン州の州立公園の中で 2 番目に
大きい公園で、ターカメノン滝は、上滝と下滝との分かれており、鉱質の関係でしょうか、青紫の水が
流れ落ちていました。若い男女にも会いましたが、老夫妻の人々が多かったのが今回の特徴です。


[L]The Lower Tahquamenon falls [R]The Upper Tahquamenon falls
These pictures were taken when visited there in October 2010.



滝を後にカナダ国境に向かい、スーセント・マリーから入国、この街は、オンタリオ州側と、ミシガン州側に
同じ名前の街が二分されており、セント メアリーズ川を渡る橋で結ばれています。スペリオール湖と
ヒューロン湖とを結んだ要衝で、大きな船が自由に通過している関門を見学した後、旅行の目的地の一つ、
マキナック島と橋に向かいました。

Mackinac Bridge: Diverted from picture postcard


マキナック橋は全長、8000メートル、吊り橋の長さは、1542メートルと、それまで世界最長の吊り橋、
サンフランシスコ金門橋を大きく越えた世界最長の吊り橋です。その橋を支える塔も水面から46階建ての
建物に相当する高さを保ち、しかも4本の自動車道を持っています。その橋からの眺めは実に素晴らしく、
鴨たちが遥か下方の水面に青白く浮かんでるのが見えました。丁度航空写真を見ているようでした。
その夜は橋の見える湖の畔で車中泊しました。黒一色の背景に転々と明るい照明に浮かんでいる橋は
[最も美しい橋賞]をもらったのもなるほどと、うなずけます。




4日目もからりと晴れ渡った秋の一日で、9時発の船で マキナック島に向かいました。携帯したトランジスタ
ラヂオからシャンソンが流れる中、船はどんどん陸地を離れて行きましたマキナック島はフランス、イギリス、
アメリカと1634年以来の歴史ある小島で、古い砦を中心に豪華な別荘とホテルが広がっています。島の交通は
自転車と馬車で、自動車はただの一台も見当たりませんでした。古風なヨーロッパ風の馬車が白塗りの建物を
縫って走り去る光景は、また格別なものです。私は自転車を借りて島を一周しました。途中、家族ずれの一家と
合流し、本当に楽しいサイクリングでした。湖岸を見ると、清水がふんだんに吹き出ており、いろいろの小石が
澄んだ水に洗われて、転がっていました。帰りの船では「君を島で見た」という人が、にこやかに話しかけて
来ましたが、本当に楽しい一日でした。

マキナック橋を3ドル75セント (1ドル360円) 支払って通過、高速道路を一気に南下、シカゴに戻りました。
途中、リンゴ畑の横の道端でリンゴを売る光景によく出会いました。その夜にシカゴに到着しました。米国には
人生を楽しむ多数の場所と、それを与えている広い国土があります。命ある限り、何回でも訪れたい山野が
どこまでも大きく広がっているのです。

8 mm film : Mackinac Bridge and Island, Michigan 1961
コダックが発売した極めて初期段階のカラー8ミリフイルムを使用、
運転中は左手に車のハンドルを、右手に8ミリカメラを持って撮影しています
撮影技術は未熟



宮本順伯 1961年10月 20歳代後半記
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Daily 1960-1963
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Daily 1972-1974
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Daily

2023:
90 年の人生を振り返った時、懐かしく思い出されるのは、若かりし頃の思い出である。
一見、常識を越えた発想があり、それを 実行するだけの活力があった。特に20歳代は、
見るものすべての感受性が豊かで積極的、高年の世代でのそれとは、とても比較できない。
国内で医師として毎日を、診療に明け暮れする生活を繰り返し、老後に引退するだけの
人生が、満足できるものかを問われた時、答えは見つからない。人生は一度だけのもの。
悔いのない一生でありたい。





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